【無幻真天楼 第十四回】雨上がり
バリン、ぼりぼりぼりぼり
「…緊張感ってもの君にはないわけ?」
腕を組んだ矜羯羅が煎餅を貪る京助に向って言う
「ふふへー; 腹が減ってはなんとやらだろなんんとやら!! 何か知らねぇけどやったら腹減ってんだよ; しかたねぇだろ」
煎餅を飲み込むと矜羯羅に反論した京助
「京助…らしいですね」
「まったくだ」
「鳥さんに言われたら京助も立派なものだよ、うん」
南が笑いうなずきながら言う
「それはどういう意味だ;」
「まんまじゃん、緊張感のない腹の虫」
「まぁほら、あれだこれこそ類友」
中島の言葉に何かを納得した面々がうなずいた
「で…」
麦茶を飲み干した京助が手の甲で口を拭いながら小雨になった窓の外を見る
「…あそこってかみえねぇんだけどあそこに柴田さんとかが…」
「いるんだ…」
坂田が小さく言ったのが聞こえたのか京助が坂田の背中に手をやった
「そして…操ちゃんを殺した奴も…か」
緊那羅がきゅっと唇を噛む
バリン、ぼりぼりぼりぼり
「…何してるんだよ制多迦」
「…や…ちょっとおいしそうで…食べる? はんぶんこ」
ヘラっと笑いながら制多迦が矜羯羅に煎餅を差し出すと矜羯羅のかかとが制多迦の頭にのめりこんだ
ぐきゅうぅうううううううううううううう
それに続いて響き渡った音の発祥元に一同の視線が集まる
「しっ…仕方ないだろうッ;」
迦楼羅が怒鳴ると乾闥婆がじとっと迦楼羅を睨んだ
うっとなった迦楼羅に制多迦が煎餅を差し出す
「…らが減ってはなんとやら、なんだよね? 京助」
「まぁそのとおりだ制多迦君」
バリン、ぼりぼりぼりぼり
京助が五枚目の煎餅にかじりつく
「まったく…いい加減にしないと晩御飯入らなくなるわよ? せっかくみんなで作ったのに、みんなで食べようって」
「そうだぞーみんな…で…って…」
母ハルミの言葉を受けてそれに続いた中島が何かを思い出して言葉を止めた
「…。」
とまった中島の言葉には誰も続かず中島の次の言葉を待っている
「…ここに何人かいない気がするのは気の…」
「せいじゃないよ」
続いた中島の言葉に鳥倶婆迦がさらに続いた
作品名:【無幻真天楼 第十四回】雨上がり 作家名:島原あゆむ