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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十四回】雨上がり

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悠助と烏倶婆迦に支えられた母ハルミがようやく落ち着きを取り戻す
「大丈夫ですか…?」
乾闥婆が差し出した麦茶のコップ
「…大丈夫よ…ありがとう」
それを受け取ると一口口に含み飲み込む
「ハルミママ…」
今にも泣き出しそうな顔で悠助が抱きついた
「ハルミ殿」
「…そうね…そうだったわね…あの子が」
コップを持つ母ハルミの手が震える
「あの子が来たの、あの日…今日みたいに白い服を着て…そして操…」
「ハルミママさん…」
「今度は京助なの? せっかく操が…操が…今度は京助を…」
「俺がどうしたって」
茶の間の時間がその言葉で一瞬止まった
そしていっせいに声がした廊下を見る
少し寝癖のついた頭をぼりぼりかきながらあくびをする
「せっめぇ;」
文句をたれながら足を進めて
「…なんだよ;なんで俺の顔見て固まってんだよ皆して;」
真ん中辺りで足を止めるとぐるりと見渡し口の端を上げる
「おはよー京助ー」
悠助が声をかける
「おー…ってか何お前ら飯食ってく…」
「京助…」
「あ?」
南が京助を見上げて指差して名前を呼ぶ
京助の後ろにいた緊那羅が頷くと
「ば…」
「きょ…」
「…んの…」
三馬鹿がほぼ同時に俯いて
「ばかやろ-----------------------------------------------------!!!!!」
「京助---------------------------------------------------------!!!」
「心配かけさせやがって------------------------------------------!!!!」
「ギャ--------------------!!; なんだッ;」
三方向からタックルを受けた京助が三馬鹿にもみくちゃにされる
「…のしそうだね」
「そう? でもまだ…残ってるんだよ」
その様を見ていた制多迦がヘラリ笑うと矜羯羅が窓に手をかけた
「…まだ結界がとかれていないってことは…まだ…」
矜羯羅の言葉に坂田が動きを止めた
「…柴田は…大丈夫なんだよな…?」
「柴田さん?; てか…何がどうなってな…悠!」
ハッとして京助が悠助を見る
「おま…大丈夫か?;」
「何が?」
きょとんとした顔で悠助が首をかしげた
「栄野弟なら大丈夫だ京助」
迦楼羅が言う
「そ…か…; うっかり俺寝て…ってあれ?; …あのー…誰かこの状況説明してくれる方ー;」
何があったのか、今まで何があってこうなっているのかチンプンカンプンな京助がおそるおそる手を上げて聞く
「…きょうすけ…」
「あ? …って…母さんな…いて」
それまで黙って京助を見ていた母ハルミが名前を呼んだ
「京助なの…?」
「え? あ? あー…まぁ…たぶん;」
「本当に? 本当に京助…」
「えーと…」
「京助だよーハルミママー」
悠助がニコーっと笑って言うと母ハルミがゆっくち立ち上がった
麦茶のコップが倒れて中身が流れる
「あ、こぼ…」
身をかがめて倒れたコップを起こそうとした京助の体を母ハルミが抱きしめた
「ちょ…かぁさん?;」
驚いた京助の声が裏返る
「…おはよう…」
母ハルミのその声は京助にしか聞こえなかった