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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十四回】雨上がり

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目をそらしたかった

目はそらせなかった

動かない白い手足から
震えながら動かない細い体を抱く母ハルミから

竜之助が白いタオルを拾い上げ絞ると陸へと向かい歩き出した
人垣の真ん中で竜が京助を下ろす
ふわりと浜風が麦わら帽子を持ち上げる
少し持ち上がった口元は微かな微笑みを浮かべているようにも見えた
「…ごめんな…京助…」
竜之助の声がした

あとは…

あとは

そのあとは…



                京助

              名前を呼ばれた

              手を握られて

            何度も何度も名前を呼ばれて

              そして光が見えた

            懐かしくて暖かくて悲しくて

         そんな感情が織り交ざって体中を駆け巡った


                 「京助」



体が重い

ようやっと指が動かせた

まるで今の今まで息をしていなかったかのようで思いっきり息を吸い込むとフガッと鼻が
鳴った

「ぶっ」

誰かが吹き出したっぽい

ゆっくりゆっくり大きく息を吸い込む

「京助…?」
「…んがら笑いすぎだから」
「っ…ごめ…ぶ」
「箸が転がっても可笑しいお年頃け、がらっちょは」
くくくく、っという噛み殺した笑いを聞きながらゆっくり瞼をあげていくと大きな目と下
がった眉
「きょ…うすけ?」
唇がそう動いて名前を呼ばれた
「…へっ」
今にも泣きそうな緊那羅の顔を見た京助が口の端をあげる
「っ…」
緊那羅が目を擦って俯くとその頭を阿修羅が撫でた
「…お遊戯でも踊るんかコレはこの状況は」
上半身を起こした京助が見たのは京助の手を握った緊那羅の手を阿修羅が握り阿修羅の手を制多迦が握りそして最後に制多迦の手を矜羯羅が握っているというまさにお手々つないで、というもの
「あーまぁ希望とあらば復活記念に踊ってもいいんやないけ? の? きん…」
ポニーテールが靡いた
「きん…なら?」
返事をするかわりに緊那羅は京助の首にまわした腕に力を込め抱きつく
驚いた京助がそのまま固まった
制多迦がへらりと笑ってパチパチと小さく拍手する
「…おかえりだっ…ちゃ」
消えそうな声で緊那羅が言った