【無幻真天楼 第十四回】雨上がり
…京助…
同じ声が右と左から
…京助…
同じ声が上から下から
コポッ
返事をしようとした京助の鼻から口から水が流れ込む
しょっぱさからそれが海水だとわかった
でもなぜかどうしてか苦しくない
冷たくもない
逆に暖かい感じがする
体全体を優しく包み込まれるような心地よさ
誉められて頭を撫でられているようなくすぐったさ
手を引かれて歩いているような優しさ
一瞬誰かに抱き締められた気がした
とんっ
背中を軽く押され前につんのめりそうになった京助を支えた細い腕
おかえり
京助
キ…ン…
小さな何かが哭いた声
作品名:【無幻真天楼 第十四回】雨上がり 作家名:島原あゆむ