RED+DATE+BOOK03
余計に酷くなってたかもしれないのに。
「楓ちゃんもさお前庇ってたぜ。」
「楓も・・・?」
楓も。
楓も俺を・・・。
頭の中がグルグルする。
胸が痛い。
息が苦しい。
眼の奥が熱い・・・。
「っとお前大丈夫か?」
グルンと視界が回り、足に地面の感触。
ソレなのにクラリと頭が回った。
「ぅわ。」
「っと。」
しっかりした腕で支えられる。
「お前顔真っ赤。頭に血上りすぎ。」
「・・・・・・・・・。」
俺は額を押さえて俯いた。
そりゃあ結構逆さまでしたから・・・。
うあー。クラクラする。
「あれ?あいつ等いねぇなあ。・・・お前此処いろよ。」
そして人が離れていく気配。
「此処って・・・。」
顔を上げれば周りには椅子とテーブルと人人人・・・。
みんなご飯の前に座ってこっちを俺を見ているよ。
「え?」
ここって食堂ですかー!!!???
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何だってこんな所に!!?
今の俺にとって人が集まりまくってる此処は命取りでしかない!!!
それに先ほどの自己中かいちょーのせいで視線は全て此方に集まっている。
わぉ!みんなの注目の的☆ってか・・・!!?
勘弁してくれよ・・・。
泣きたい気持ちを抑えてあたりを見ると睨んでます睨んでますよ可愛い男の子達が。
否、男に『可愛い』って単語を使うのも『子』なんてつけるのも間違ってると思いますがコレがぴったりしっくりなんだからしょうがない。
俺が言われたらキレますけどね。
お願いだから、その眼は止めて欲しい。
居心地が悪いなんてモンじゃない。
思わず俺はそれから目を逸らした。
下を向いてどうしようかと考える。
かいちょーは『此処にいいろ。』なんていったがソレに従うつもりはさらさらない。
俺は自分の身の安全が保障されるところに行きたいです!
よし!
俺はぎこちなく足を一歩踏み出した。
迷わず食堂の出口へ向かおうとしたのだがそれを阻もうと俺の前に出る数名のつま先。
「・・・何?」
うんざりした顔で前を向くといつぞや見た顔だ。
あ!いじめっ子!!と+@!!
「お前さ、本当に痛い目見なきゃわかんないの?」
「何を?」
痛い目・・・痛い目・・・もしかして俺これから今リンチとかされちゃう系!!?
「とぼけてんじゃねぇよ!!」
そして俺はドンと胸を突き飛ばされた。
可愛い顔して貴方わりとやるもんだね。
マジ天使みたいな顔してその言葉使いと行動はどうかと思うよ。
や。鍛えてるからそのくらいじゃ無傷ですが。
「・・・え〜っと・・・かいちょーの事とか春といる事とか楓とか・・・え〜っと・・・聡部長とか宮先輩とかじゅんペーとか??」
制服と机に書かれていた名前をつらつら言っておく。
だけど俺、副会長とは本当に関係ないぜ?
喋ったのも一回だし。
だから副会長は割愛って事で。
「分かってやってるって事だよな?」
「分かってるっていうか・・・かいちょーはどうでもいいし。俺、春と楓とは友達になりたいだけなんだけど。」
「どーでもいいってなんだよ!!?それにお前が友達!!?」
その言葉に笑いが巻き起こる。
・・・俺笑わすことなんていった覚えないけど。
卑下したような眼で攻撃され俺の全身はちりちりと痛い。
痛い。
「そう、友達。あいつ等がそう言ったならもう友達。」
そう、彼らは俺を守ってくれた。
俺を選んでくれた。
だから俺は何をしなくちゃいけないかくらい分かってる。
例え自分が傷ついたって。
春と楓はもっと痛かったと思うから。
覚悟をしなくちゃいけないんだ。
逃げちゃいけないんだ。
俺は食堂から出て行くのを止めた。
『友達』と言う言葉に笑いは収まりあからさまに敵意の込められた眼で見られる。
「何?俺が友達だと何かいけないわけ?」
俺もつくづく好戦的だよな。
やんちゃしてた時もあったし・・・もう随分と昔の事だけど。
「お前じゃ不釣合いなんだよ!!」
これだけ人がいるのにも関わらず声は食堂全体に響き渡る。
「そんなの誰が決める?てか、友達に不釣合いも何もないだろ?」
美人がブスと結婚しちゃダメなんて法律この国には無いんだよ。
「お前・・・。」
憎悪の瞳。
相手は相当怒ってるようで顔は真っ赤だ。
「はっ。目立ちたがりなだけだろ?」
次に聞こえてきたのは違う声。
俺は黙ってそっちに目を向けた。
「髪の事?じゃあ、かいちょーも相当の目立ちたがりだよな?」
挑発してるって自分でわかってる。
だけど此処で引いたらダメなんだ。
「第一この髪はこっちに来て染めたわけじゃねーし。それとも黒髪にしたらいいんですかね?」
「・・・気持ち悪ぃんだよ!!その眼だって!!!」
「へぇ〜。楓は綺麗だって言ってくれたぜ?」
「っっ!!」
勝った!!
よっしゃ!!コレなら勝てる!!
ちょっとの心の余裕。
それに浸っているのもつかの間俺は再び言葉の暴力を浴びせられた。
「大抵その顔でたらしこんだんだろ?」
「は?」
思っても無い言葉に思わず止まってしまう思考。
「女みたいだもんな?前の学校でもそうとう食ってたんじゃねぇの?」
俺にだって『食う』が食事とかそういうことじゃないってくらいわかる。
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「わざわざカラコン入れたりして気を引いて・・・。」
いや、マジこれ自前。
だって最初は黒眼だったべ。
あれがカラコン。
「お前どんだけ食ったんだよ?」
明星高校で?
頭が鈍器で殴られたような衝撃だった。
何もしらないくせにこいつらは何をいっているんだ?
俺があの人達と?
「是非ヤり方でも伝授してほしいな。」
うるさい。
どこかで自分を引き止める声が聞こえたがそれ以上に俺は痛くて熱い感情が沸き起こってくるのを止められなかった。
「青木君とはもう寝たのか?」
うるさい。
「まさか綾瀬君とは寝てないよね?」
うるさい。
うるさい。
「お前うるさい。」
頭の芯がキィンと冷えている。
それなのに眼の奥は真っ赤に燃えているんだ。
声はもう聞こえない。
耳の奥はどろどろとした熱い何かで支配されていた。
「お前五月蝿いよ。」
俺はそれまで喋っていた奴の襟首を掴んで上に持ち上げた。
誰かがそれを止めようと動く気配がしたのでそっちを横目で見ると顔が面白いように青ざめていき動くのを止めた。
俺が掴んでいる男はありえないというように口をパクパクさせている。
先ほどまで厭味ったらしく歪んでいた顔は今度は恐怖に支配されている。
「俺の眼がそんなに羨ましいんだ?」
「ひっ。」
「言っとくけどこれ生まれつき。意外と大変だったりすんだぜ?」
ちりちりと頭に鈍い痛みが走る。
神経を焼かれていくような快感。
「ねぇ?お前の眼も違う色にしてあげようか?」
「何・・・を。」
掠れた声が正面から聞こえてくる。
「簡単簡単。」
眼を大きく開いてハァハァと呼吸をしている奴にニコリと笑いかけた。
「俺がその眼抉ってやるよ。」
作品名:RED+DATE+BOOK03 作家名:笹色紅