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RED+DATE+BOOK03

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「はぁ・・・。」

「・・・・・・・・・。」

無言で口に食べ物を入れていく春、そして先ほどから溜め息しか吐いてない楓。

二人は食堂にいた。

「亮・・・何処に行っちゃったのかな・・・?」

チャイムが鳴ると同時に教室を出て行った彼、背中にははっきりと拒絶の色。

もちろん追いかけることだって出来たが楓はあえてそれをしなかった。

「多分ちゃんと食べてるよ。それより食べないと冷める。」

春が箸を止めてそう告げる。

「うん。そうだね。」

ついこの間まで二人っきりだった食事なのに今日は全然進まない。

楓は海老ドリアをスプーンで混ぜながら何度目かになる溜め息を吐いた。

春と楓が食堂に入ってからもヒソヒソと声が聞こえていた。

それは予想通りの内容で憤りを通り越してむしろ悲しくなってくる。

「楓、行儀悪い。」

「うん。」

返って来るのは生返事。

「ねぇ、春。なんで僕達は友達も選べなくなっちゃったのかな?」

ポツリと寂しそうに落とす声は春にしか聞こえない。

「なんで・・・大切な友達を作っちゃいけないのかな?」

答えなんて単純なもの。

だけれどその答えには辿り着けない。

「楓・・・後悔してるの?」

「してるよ。もちろんしてる。僕があの時声をかけなかったらとか自分の考えの浅さに。春はしてないの?」

「してないって言ったら嘘だ。」

「そう・・・だよね。」

春なんていきなり亮に抱きついてたしね。

「だけど、亮と会わなかったらもっと後悔した。」

「そう・・・だね。」

自分のエゴイストな考えに苦笑い。

楓は黙って食事を口に運んだ。

食べ終わる頃急に人口が増える食堂の中。

「春、早く出よう。」

今はなるべく会いたくない人が此処にきた証拠。

だがあちらはこちらに用があったみたいで食器を片付けてる丁度その時声をかけられた。

「齋藤亮は?」

いたって簡潔で用件のみの質問、むしろ固有名詞。

「葵先輩・・・。」

現れたのは髪を紫に染めている生徒会長。

「亮はいません。」

それだけ言って春は踵を返そうとする。

「なんで?今日は学校来てるはずだろ?」

楓は困ったように春の顔を見上げてから葵に向き直った。

「葵先輩・・・亮をそっとしておいてください。」

その言葉に怪訝な顔をする。

しかし何か思い当たったのだろう唇に指をあててへぇと呟いた。

「なるほどな。じゃあ、俺がアイツを貰っていいって事だよな?」

「っ違います。」

楓が即刻返事をするが葵は企むような笑顔を宿したままだ。

春は帰ろうとしていた身体を反転させた。

「会長、自分の言葉にもっと責任を持って頂けませんか。」

「は・・・春。」

真剣な眼で睨むように喋る春。

「お前アイツの事になるとやけに饒舌になるよな。」

茶化すようにケラケラと笑う姿は挑発をしているようだ。

「・・・亮が言っていましたよね。自分の行動でどのくらい迷惑がかかるのか考えろって。」

「お前はどうなんだよ?あぁ?こんな事になってんのは俺だけの事じゃねぇだろ?むしろ楓ちゃんとお前がいるからじゃねぇのか?」

「っ・・・。」

楓は顔を真っ赤にして俯く。

:::::::::::::


春は眼を細めて楓の頭に手を置いた。

「否定はしません。だけど俺はそのくらいの覚悟はある。」

「へぇ?」

馬鹿にしたように笑う葵を一瞥して楓に帰ろうと囁く。

「ちょっと待てよ、その覚悟此処で表したっていいんじゃねぇの?」

「はる・・・。」

泣き声が混じった声は楓のもの、心配そうな顔で見上げている友達に口元だけで笑った。

「俺の友達は自分が決める。それが例えどんなに否定されたってだ。正し・・・。」

そこで春は回りを見回した。

大勢がいる食堂は水を打ったように静まり返っていた。

「亮を苦しめたら許さない。コレは俺のエゴであって彼には関係ないことだから。」

息を一つついて春は再び会長を見た。

「以上です。多分これは楓も同じ気持ちですから。」

その言葉に楓は思いっきり首を上下に振った。

「うん!僕も亮は大切な友達です!!だから彼を悲しませるような事はしないでほしい。」

「では、失礼します。」

春と楓はそれだけ言うと教室に向かっていった。

二人がいなくなると静かだった食堂がざわざわと騒がしくなる。

葵は面白くなさそうな顔をして耳に入ってくる小言を聞き流す。




ったく・・・前代未聞だよなこんな事ってのは。

あんなんで終わってたら安いもんだけど。

でも一番の厄介者がいないってだけマシか?

おもしれぇ奴が出てきたよな。

葵の中で亮の興味は大きくなっていくばかり、例えそれが望まない結果であったとしても。


::::::::::::::

亮は再び気をつけながら小さな窓から中に入り、教室へ向かった。

楓と春が来ていない事に安心したように息を吐き、自分の席に着いた。

放課後、急いで教室を出て体育館に向かう。

さきほどとはあからさまに違う空気が少し気になったが視線は未だに冷たいものだったので考えないように歩いた。

部活中、聡先輩が声をかけてくれたり宮先輩がちょっかいを出してきたが一歩距離をおいていると意図に気づいたのかそれ以上は何もしてこなかった。

春とは最低限の接し方。

眼もあわせないで二言三言喋るだけ。

そして部活が終われば自主練習もすることなく速攻で桐生さんが待つ車に戻った。


そんな生活が続いた4日後。


「亮ちゃん、もしかしてあなた痩せた?」

「え?」

篠宮家、朝の食卓の会話だ。

亮は箸を空に漂わせて母親の顔を見た。

「そんな事ないと思うけど?」

首を傾げてみる。

鏡は毎日見ているが意識した事は無かった。

「本当だ、少し痩せたな。」

スーツの上着だけ着ていない父親は座りながら亮の顔を覗きこむ。

「親父まで・・・え〜?じーちゃん俺やせたかな?」

祖父はというと、うーんと唸った後やはり少し頷いた。

「ほんの少しだけど頬がこけたかもしれないね。」

「部活が忙しいのかしら?」

心配そうに茶飲みを渡してくれるのは祖母。

「いや〜。そんなにこっち来て美味いもんばっか食ってから痩せるって事はないと思うんだけど・・・。」

「や〜よ、亮ちゃん。あなたそれでなくても細くてちっちゃいんだからその内モヤシになっちゃうわよ。」

「じゃあデカく産んでくれよ。」

あんたがもっと親父のDNAを濃くして産んでくれれば俺の身長だって180cmくらいはいっただろうし女っぽい顔じゃなくて男!みたいな顔になったんだよ。

「杏那にも抜かされちゃったらどうしましょうね?」

その言葉に俺はハッと自分の妹を見た。

まだ生まれて半年くらいしか経ってない赤ちゃんはすやすやと寝ている。

「それは嫌だ。」

すごく嫌だ。考えただけでも嫌だ。妹に見下ろされる日がくるなんて死んでも嫌だ。

「わかんないわよ〜。最近の子は発達がいいって言うじゃない?」

追い討ちをかけるようにおふくろが言う。
作品名:RED+DATE+BOOK03 作家名:笹色紅