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RED+DATE+BOOK03

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裏のない笑顔がすごく眩しくて綺麗だった。

『俺はお前のところスキだから一緒いるんだ。今日あったばっかだけど楓と友達になりたいと思うよ。友達が人気者なんてすごくねぇ?』

亮の言葉は宝物のように心の中にしまってある。


:::::::::

「うん。楓、最近無理してないから。」

「・・・でも、僕の・・・僕たちのせいで亮は傷ついてる。」

「・・・・・・・。」

「今日学校に来ないのも会いたくないのかもしれない。」

「・・・明星高校。」

「え?」

「亮の前の学校の人達・・・が必要だと思う。」

「・・・僕たちよりたくさん亮の事知ってるしね。」

自分で言いながら少なからずもツキンと胸が痛んだ。

時間の溝はしょうがないのだ。

どんなに望んでも過去には戻れない。

それは誰でも一緒。

「でも・・・明星は遠いでしょ?それに僕達は亮の前の学校の人なんて知らない。」

「知ってる人いる。」

「・・・・・・・・・。」

「昼休みに一緒に行こう。」

「うん!」





カチャリと食器の当たる音がした。

「う・・・ん・・・。」

俺は重い眼をうっすらとあける。

眼に入ったのは長い黒髪の白いシャツを着ている人の後姿。

「だれ・・・?」

むくりと上体を起こすとその人も此方を向いた。

「起こしてしまいましたか?」

「桐生さん・・・。」

普段のスーツでは無い、薄いシャツとチノパンをはいたラフな格好の彼。

「お母様に御了承を頂きお部屋に入らせて頂きました。申し訳ございません。」

「いや・・・全然平気だけど。」

「喉渇いていませんか?」

そう言って渡されたのはスポーツドリンクが入ったコップ。

俺はソレを貰って一気に飲み干した。

口から喉へ、そして全身にしみこんでいく水分。

そういえば昨日の夜から何も口にしてない。

それも熱が出たのだから汗だって沢山かいただろう。

額の冷えピタを外して傍にあった濡れタオルで顔を拭いた。

「もう一杯飲みますか?」

「うん!」

そして俺は二杯目もあっという間に飲み干してしまった。

「一応、粥を作ってみたのですが・・・。」

桐生さんの後ろには湯気が立ちながら置いてある土鍋があった。

「食べる。腹減った。」

俺はベットから抜け出した。

時計を見てみれば丁度12時を指している。

「桐生さんは昼飯はどこで?」

「私は違うところで・・・。」

「なんで?どうせだから一緒に食おうぜ。いつも何処で食ってんの?あ、でも俺の風邪移っちゃう?」

「いえ・・・それは平気ですが。」


::::::::::::

「?ん〜。桐生さんはいつも何処で食べてんのかわかんねーんだけど・・・。」

「私は一人で・・・。」

「はぁ?一人!?何で!?ここの家にはいっぺー人いんのに・・・。じゃあ、居間で食べようぜ!二人で食おう!」

確かじーちゃんはまだ現役で仕事もっててばーちゃんは花道教室とか開いてるから昼時はいないはずだ。

俺がそう言うと桐生さんは少し困った顔で微笑んだ。

「そうですね・・・。ではお邪魔します。」

俺の為に持ってきてくれた粥を盆にのせて運ぶ。

「桐生さんの飯は?」

「私のは亮君のお弁当です。」

「あ・・・。ごめんなさい。」

「いえ、いつもは自分で作ってるので手間が省けました。」

「そうなんだ。桐生さんの飯ってマジ上手いから昼飯はいっつも楽しみ♪」

「そうですか。亮君のお口にあってよかったです。いつも綾瀬君達と召し上がっているのですか?」

綾瀬という言葉に少し胸が苦しくなった。

しかし亮は勤めて笑う。

「うん!学食でたべてる。」

「学食・・・ですか?教室ではなく?」

「うん。楓たちは学食の飯だし。」

「・・・もしかして亮君はあの量をお一人で?」

唖然としたように呟く桐生さん。

「えあ?うん。」

「・・・・・・・・・・・・・そうですか。」

あ・・・。やっぱあれってみんなで食う位の量なの?

でも俺あれで丁度いいんだけど。

そんな話しをしているうちに居間に着いた。

「じゃあ、俺待ってるね。」

座椅子に座る。

桐生さんの後ろ姿を送って茶でも淹れようと急須を手に取った。

玉露って温度は低いほうが美味しいんですよね?

・・・・・・。

無理無理わかんねーって。

緑茶にしよう。

こぽこぽと茶碗に注ぐ。


::::::::::


スッとふすまが開いて桐生さんが入ってきた、俺の茶の入れてる姿を見て桐生さんは驚いた顔をした。

「はい、コレ桐生さんの。」

おそらく超高いのであろう茶碗の一つをむかえのテーブルに置く。

「亮君がそんな事しなくていいんですよ・・・。」

立ってる桐生さんを見上げると狼狽しているような複雑な表情。

「・・・なんか桐生さんっておかしいよな?」

「・・・おかしいですか?」

「うん。桐生さんこそ俺なんかに敬語とか使わなくていいのに。やってあげてる身なんだからさ、もっと労われ!とか言っていいと思うんだけど・・・。」

「滅相もないです。そんな事・・・。」

「まぁ・・・雇われてるっちゃそんな事できねーのかな?でもさ俺は篠宮じゃなくて齋藤だし?庶民だからなんか違和感がある・・・。」

マジで年上の人でそれも俺より人間がなっていそうな人から敬語使われたりするのって慣れない。

第一桐生さんは篠宮に仕えてるのであって俺には仕えてないんだからそんなの気にしなくていいのにと思う。

「そんな事初めて言われました。」

「はぁ?マジで?でも桐生さんだって友達にはそんな言葉遣いじゃなかったんだろ?」

「ええ・・・まぁ。」

「じゃ俺にもそんな感じで言ってくれていいのに・・・。もしかしてじっちゃんとかからお咎めがあるとか?そんなら俺が無理して言ってもらってる言うよ?」

「いえ、でも敬語はもう癖なんですよ。」

桐生さんはようやく座布団に座り弁当の蓋を開けた。

それにならって俺も蓮華を手にする。

「いただきます。」

「はい。召し上がってください。」

美味しそうな卵粥を少し掬ってふぅーと息をかける。

「ん。美味い。」

「良かったです。」

昨日は全然食べたいとすら感じなかったのに不思議だ。

やっぱり人間は強い。

:::::::::

「・・・亮君・・・。」

「ん?」

じっと俺を見ている。

俺は桐生さんの視線の意味に気づいた。

「・・・昨日の事だろ?」

「・・・ええ。差し出がましいとは分かってますが。」

「いいよ。別に。それに・・・俺言ったじゃん桐生さんに『大丈夫だ。』って。」

まぁ、今言った大丈夫と昨日のはずいぶん違うのだけど。

「亮君・・・。」

「・・・優先順位なんだ。」

「え?」

「只、俺にとっての大切なものを決めただけ。だからもう大丈夫。」

そう。

自分なりに考えたことがあった。

寝ている間に俺の頭は潔く飽和状態でパンク。

いろんな事がちりじりになっていく。

でも其処に残った考えはあった。

それが例え卑怯者と罵られそうなものでも。

誰かを傷つけたって。

守りたいものが分かってしまったのだ。
作品名:RED+DATE+BOOK03 作家名:笹色紅