RED+DATE+BOOK03
「そうだけど・・・すげぇなお前って。菓子作れるし。」
俺の中で飯と菓子作れる人は凄い人だ。
「その事なんだけど・・・お前さっき俺ん家の和菓子食ったっていってたよな。」
「うん。」
「それ・・・どこで食べたんだ?」
「どこって・・・家だけど?」
確かばーちゃんが茶道教室で余ったからってくれたんだっけ。
「家?盗んだとかじゃ無くてだよな。」
「失礼な!!盗むはずねぇだろ!!」
いきなりなんなんだよコイツ!?
俺が睨むとじゅんぺーは難しい顔をして頭をかいた。
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「お前が言ってた山吹色の和菓子はお得意様にしかやってねぇやつなんだよ。」
「え?だから。篠宮だろ?」
俺がその苗字をだすとじゅんぺーは呆気に取られた顔をした。
・・・・・・あ。
なるほど、そっか。
「言ってなかったっけ?俺、篠宮の親戚なんだ。つーか親父の旧姓が篠宮。」
「・・・は?」
「だから、ここの学校の学園長が俺の親父の兄貴なの。」
「・・・・・・・・・。」
お。固まった。
「おおおおおおまっ!!」
のもつかの間俺の所を指差してどもってる。
「んー。ゆっくり落ち着けってじゅんぺー。」
面白い反応だけどポンポンと肩を叩いて落ち着かせてやる。
「お前なんでソレいわねぇんだよ!!?」
「なんでって?別にそんなんわざわざ言う事じゃねーだろ?」
「言えよ!!そしたら嫌がらせなんて無くなるんだぞ!!」
え?そうなの??
「言ったよな。此処の学校は家柄で決まるって。」
「あ〜。そういや・・・。」
言ってましたねそんな事。
「そういやぁ・・・じゃねーよ!」
じゅんペーは少し呆れ気味にそれでも怒鳴りつけるように言った。
「ま。いいや。」
でも俺はケロッとそう答えた。
「何?」
とたんに曇る表情に苦笑する。
「どうでもいいや、んな事。」
「・・・・・・。」
意味不明という眼を向けられたので続けた。
「そんなん言わなくたって俺の所認めてくれる奴いたから。」
そして楓と春、クラスメートを見渡す。
「もちろんお前も。」
最後にじゅんぺーの胸を指でトンと押す。
「だからそんな事言わなくてもいい。それに俺は齋藤だし。嫌がらせも・・・すっげー嫌だけどそのうちどうにか為ると思うし。」
「お前って・・・本気で馬鹿なのな。」
呟くように言われた言葉は物凄く失礼なものだったがソレに笑顔で答えてやった。
「じゅんぺー博士よりマシだと思います。」
「てめぇ!!」
じゅんぺーがふざけて掴みかかろうとするからそれから逃げるように体が動いた。
それがいけなかった。
「あ・・・。」
頭の中がぐるりとかき混ぜられた。
所謂、立ち眩み。
もしかしたら貧血。
目の前が暗転して俺は倒れた。
倒れる直前に思ったことは昼飯ちゃんと食べとけばよかっただ。
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夢を見た。
幸せといえる過去の記憶。
翔がいた頃の夢。
彼の隣で俺は馬鹿みたいにはしゃいでいた。
それこそ毎日が夢のようでこの日常がなくなるなんて思いもしなかった。
『私、貴方を絶対許さないから。』
言い渡された言葉は俺に相応しいもの。
自分の罪はいつまでも許されないもの。
それでも・・・。
それでも俺はソレを背負っていかなければならない。
否、背負いたいのかもしれない。
「・・・・・・・・・。」
はれ?此処はどこ?
すんなり夢から覚めた俺は視界に入った黒に眉を寄せた。
そんなのも一瞬で次は体が浮く。
「は!!?」
ガバッと状態を起こせば其処は
「お目覚めになりましたか?」
心配そうな桐生さんのドアップ。
「ききき・・・桐生さん?」
「はい。あ、亮君動かないで下さいね。」
「へ?」
動いちゃダメ?
よくよく今の俺の状態を認識してみれば・・・
俺の手は桐生さんの首に絡められていて。
桐生さんの左手は俺の背中、右手は俺の足を持っていて。
・・・コレはすなわち
姫だっこ!!!??
「うわうわっっ!!桐生さんいいです!!おおお降ろして下さい!!」
何!?何何々!!?今日の俺は担がれ日なの!?
つーか、んなほいほい担がれるのは男としてどうかと思うんだけど!!
「いえ、車は昇降口に止めてもらったので大丈夫です。亮君、掴まってて下さいね。」
「いや、それ以前に俺大丈夫です!!重いし!歩けますし!!」
「いけません。倒れたと聞きました。このまま病院にいきます。」
「病院!!!?いいって!!只の貧血だし!つーか腹へって倒れただけかもしれないし!絶対そうだし!!」
「それでなくてもこの頃元気が無かったので。」
ガラリと保健室のドアを開けて廊下に出てしまう。
「や!!それは無事解決したというか・・・仲直りしました。」
「そうですか。それは良かった。」
それだけ言って桐生さんはカツカツと平気で廊下を歩いていく。
今は放課後なのかそんなに生徒はいないが俺達を見る眼は驚きの物が多い。
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「・・・もしかして・・・桐生さん怒ってる?」
「・・・・・・・・・。」
桐生さんの顔を見上げると真剣な顔をして前を向いていた。
「ええ。少し怒っています。」
「え・・・。」
やっぱ怒ってる!!!?
ど・・・どうする俺!?
何か怒らせたことしたっけ!!?
むしろこの状況か!?
思わず身体を堅くしてしまう。
桐生さんはそれに気づいたのか言葉を続けた。
「そんなに緊張しなくていいですよ。」
「でも・・・。」
「私が怒ってる相手は亮君ではありませんから?」
「じゃあ・・・。」
「自分自身ですよ。すみません。倒れるほど無理をしていたことに気づかなくて。」
「はへ?」
ちょ・・・ちょっと待った。
なんで桐生さんが謝るわけ?
「やや。桐生さん全然悪く無いじゃん!謝る必要なんて無いって!」
慌てて否定の言葉を選ぶが桐生さんの顔は晴れないままだ。
「いえ・・・。」
そして俺から顔を逸らしてしまった。
「俺・・・桐生さん悪いとか思ってないよ。」
見上げて桐生さんの首を引き寄せる。
「てか、誰も悪くない・・・いや、悪いっつーかムカツク奴はいるんだけど。それに桐生さんには感謝してるんだ。」
「感謝・・・ですか?」
「うん。俺の所心配してくれてる。それってすっげー嬉しい。」
なんだか俺はみんなに心配させっぱなしなんだけど・・・。
「亮君・・・。」
「ね!だって普通こんな抱っことかしてくれないし。」
本心を言えばはやく降ろして欲しいのですが・・・。
桐生さんはハッとして車のドアをあけた。
そして俺を助手席に乗せる。
「あ・・・!すみません。直ぐに病院に行きましょう。」
「いやっ・・・!俺本当に全然なんともないから!!」
「しかし検査はして貰ったほうが・・・!」
「俺病院嫌いなんだ!!」
ぽろっと出た言葉に一瞬凍る空気。
うわー。病院嫌いって子供かよ・・・。
だけど・・・本当に病院はダメなんだ。
あの白い部屋が。
作品名:RED+DATE+BOOK03 作家名:笹色紅