RED+DATE+BOOK03
「分かったか?」
分かった?と聞かれれば分かったことは・・・。
「綾瀬財閥って・・・あの有名な金持ちの?青木・・・よく栄養剤とかドラッグストアで売ってるあのアオキ?」
「そう。だからあいつ等の地位は上。頭下げて交友関係保ってれば自分の家に利益が行く。んで、あの先輩はそんなに俺に口出しも出来ないってわけ。」
「すなわち・・・。」
「だから気に入られてるお前は敵意の的ってわけだ。まぁ・・・それだけじゃねぇとは思うけどな。」
「あー。」
アイドル系の人気も高いって事か。
「ふーん。そーなんだ。」
やっと理由がわかった。
なるほどな、そういう訳なのか。
「・・・・・・。」
純平は俺の様子を少し窺った後溜め息をつくような笑いを漏らした。
「ま、そういう訳だ。」
純平は俺の目尻に溜まった涙を乱暴に親指でこすった。
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「あれ?」
「・・・なんだ?」
「さっきも思ったんだけど・・・じゅんペーって甘い香りがするよな。」
香水でもつけてんのかな?と思ったが純平はその言葉に顔をカッと赤くさせた。
「え?何?俺不味いこと言った!!?」
「いや・・・お前しらねぇから・・・。」
「知らないって・・・じゅんぺーの家は・・・。木野下・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
木野下・・・木野下・・・どっかで・・・。
結構この頃どっかで・・・。
「あ!!!!」
分かった!!木野下!
「お前の家って和菓子屋!!!?」
じーちゃんたちとお茶飲んでて食べた和菓子が木野下って店だ。
めちゃくちゃ美味かった和菓子!!
確かばーちゃんの茶道教室の菓子は全部木野下とかなんとか・・・。
「へーへー!!じゃあじゅんペーは和菓子職人になんのか!?」
「俺は洋菓子が好きなんだよ。」
「そうなのか?でも・・・あの・・・山吹色の和菓子めっちゃ美味かったよ。柑橘味の餡子が入ってて・・・。」
「・・・それって・・・。」
「うん。和菓子も洋菓子も美味いものは美味いよな!」
なんか食い物の話してたらめちゃくちゃ腹減ってきた!
むしろ今何時!?
ポケットに入ってる携帯を見てみれば次の授業開始10分前!!
「げっ!!じゅんぺー次の授業ってなんだっけ!?」
「体育だけど・・・。」
だからじゅんぺーは運動着なのね。
「俺着替えてこなくちゃいけねぇから!!」
つーか腹減った!!!
でも飯食ってたら確実に5限目遅れるし!
慌てて体育倉庫を出る。
「じゅんぺーサンキュ!後でな!」
「おい・・・。」
眩しい光が亮に降り注ぐ。
どうしよう?
すっげー嬉しい。
「あ!亮見っけ!!」
そんな声が聞こえてきたのは校舎を入ってすぐだ。
「楓!春!」
俺は方向転換してそのまま楓に抱きついた。
「うわっ!!りりり・・・亮!?」
「楓ごめんなっっ!!」
両肩をもってむかえ合うと楓の顔は真っ赤だ。
「大好きだ!!」
「っっ!!!」
ボンって音がするくらいにもっと顔を赤くして楓は黙ってしまった。
「・・・・・・いいな。」
ポツンと聞こえてきたのは春の声。
「春もありがと。」
「うわわっ!」
楓を抱きしめたまま春の胸に体当たりする。
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「うん。」
春はやんわりと俺の背中に手を回して少し抱きしめた。
楓はサンドイッチ状態だ。
「苦しいよ・・・亮・・・。」
「あっ!ごめんな楓。」
慌てて力を緩めると楓は俺の手を取り握りしめた。
「亮、僕も大好きだよ。」
はにかむような笑顔。
やべっっ!!!滅茶苦茶可愛い!!
なるほど。
楓にファンがいっぱいいるのも分かる。
「あ〜。次体育じゃん?そろそろ行かなきゃな!」
不自然に楓から眼を逸らせてパッと手を放す。
今更抱きついたことが恥ずかしくなった俺でした。
「わぁ。妬けちゃうね。」
エントランス二階、上階から見下ろせば昇降口が見える。
普通の学校がどういうものかはわからないがこんな造りになっているのは珍しいだろう。
其処に佇む二人。
銀色の長髪を軽く纏めた青年、生徒会副会長の加賀雅之は隣にいる男にクスリと笑いかけた。
「はっ・・・こんな所で告白なんかして・・・アイツ本当に馬鹿なのか?」
答えたのは藤堂葵。
「まぁ・・・殆どが葵が発端になってるみたいだけど?」
その言葉に人の悪そうに笑う。
「おもしれぇだろ?」
「今迄に例を見ないタイプだね。外部生って事もあるんだけど・・・見てよあの青木君の顔。彼があんな顔するのはそうそうないよ。」
二人は仲良く教室に向かっていく三人の姿を見ながら話を進める。
「で?アイツの情報は何か出たのか?」
「それがさ・・・桐生先輩を運転手にしてるんらしいんだ。で、篠宮家にいるみたい。」
「篠宮?篠宮って此処のか?」
「そう。桐生先輩が関わってるってだけで真実味は一層増すでしょ。何故か学校にある彼の個人情報は書かれてない事が多くて・・・。」
「でも篠宮にいるって事は・・・。」
「うん。多分篠宮の人間なんだよ。そうなると京君とも係わり合いがあるね。」
「だけどそんな感じは全然しねぇな。」
「育ちは違うからでしょ。」
「・・・京が帰ったらやっかいな事になるぞ。」
「顔・・・笑ってるけど。」
やっかいになると言いながらニヤニヤと先の事を思いながら葵は笑っている。
ソレに溜め息を吐きながら雅之は横目で見る。
程なく二人は教室へと戻っていった。
「うっしゃーーー!!!亮行っきマース!!」
「いや、俺が撃ったら走ってね。」
只今体育の授業真っ最中。
これから100mのタイムを取るらしい。
「齋藤君は速そうだよね。」
俺の隣には一緒に走るクラスメート。
「ん〜!俺は多分上の下だと思う。」
「それって結構微妙な表現だね。」
クスクス笑うクラスメート。
彼等は春と楓と春で仲良く校庭に出て行ったらそれだけで状況が分かったらしくすんなりと受け入れてくれた。
「じゃ位置についてー・・・。」
方膝を着きスターティングブロックに足の裏を押し付ける。
「ヨーイ・・・」
パンッと音が鳴ると共にスタートをきる。
そしてそのままゴールまで走りきる。
走るのは風を感じて気持ちいい、これは小さい頃から変わらない。
「どうだった?」
くるりと方向転換して記録者に聞いてみる。
「11秒87ですね。」
バインダーを覗き込むと俺より先に走った人の記録がかかれていた。
「うわ!春って速いんだなっ!」
因みに春は11秒12。
そしてその後に眼に止まったのが10秒台。
「げっ!!じゅんぺーってこんなに速いの!!?」
「うん。木野下君は陸上部だからね。」
「そうなん!!?」
絶対部活なんてやってねぇと思ってた。
「じゅんぺー!!お前って陸部だったのか!!?」
大声で走りながらじゅんぺーの所に行くとソレがどうしたという顔で見られる。
「めちゃくちゃ意外だし!つーか職人なんだろ?」
「あー?部活は関係ねーだろ。」
作品名:RED+DATE+BOOK03 作家名:笹色紅