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RED+DATE+BOOK02

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「もう一回いってみぃワレ!誰が誰に負けたんやって!!?」

「だからアンタが俺に・・・んっ!」

その後の言葉は続かず俺の口は後ろから伸びた手によって阻まれた。

「亮、それ以上はダメ。」

俺の頭を抱きかかえるように口を押さえているのは春。

俺は文句を言おうと春の眼を睨んだが黒の瞳があまりにも穏やかで頭に血が上ってる自分が馬鹿らしく

なってしまった。

コクンと静かに頷くとゆっくりと手が口から放される。

「分かった。宮先輩すんませんした!」

頭を下げると宮先輩は鳩が鉄砲玉に当たったような顔をしてそっぽを向いて頭をかいた。

「亮は大きい。」

春が首を傾げながら俺を覗き込む。

「いいって・・・標準よりちっちぇ事なんて自分がよくわかってっから。」

「俺は、亮が大きく見える。」

多分これが春の慰め方だ。

友達に気を使わせるなんて本当になってない。



「あんがとな。」

情けない笑みを向けると春は首を振って頭を撫でてくれた。

「ミヤは大人気ないね。」

事の動向を見守っていた聡先輩はにっこり笑って宮先輩を見る。

「っ・・・なんや・・・その俺もちょっとは悪かった・・・。」

その笑顔に青ざめながら宮先輩もたどたどしく謝った。

周りの部員は「ミヤに説教が出来る一年」という認識をし、快く亮を認めた。

しかし、俺は気づくべきだったんだ。

俺はまだ悪意の対象になっていたという事に。

これでまた別の悪意が増えたという事に。




「・・・で、亮はどこのポジションを守っていたんだい?」

ステップやパス練習を終え、それぞれがコートに入る。

十五人いるバレー部だがその内二人は怪我をしていて見学だ。

どうやら聡先輩は交代しながら俺もコートに入れてくれるらしい。

「俺は・・・基本的にはオール出来るんですけど・・・。やっていたのはフロントレフトです。」

「つまり・・・。」

「アタッカーでした。」

「ほんまかいな?」

まぁこの身長でアタッカーなんていうのは無理あるか。

だけど俺のポジションそこだったし。

「本当です。」

聡先輩は少し考えた後顔を上げた。

「よし!じゃあ、レフトに亮を入れてみよう!」

「マジかい!?」

「うん。二回目から亮を入れる。それまで亮はどんな動きしてるか見ててね。」

「はい!」

流石日本一の学校だと思った。

アレだけ走りこんだりした後なのに全然疲れを見せない。

トスは正確に上がるしこぼれたボールもちゃんとセッターに渡される。

そしてアタッカーは高くスパイクは鋭い。

俺の心臓はドクンドクンと高鳴って早くあそこでやりたいと急かしていた。

ピーっと電子音が鳴ってメンバーが入れ替わる。

「じゃあ、亮入って。ミヤはこっちのコートに来てお前はフロントライトね。春はなるべく亮にトスを

上げる。」

俺のチームはセッターが春。

・・・それだけしかまだ覚えてません。

相手にはセンターに聡先輩、俺の真正面にいるのは宮先輩だ。

「全部止めるちゅーねん!」

手を上げるだけでそうとう高い。


「よろしくお願いします!」

俺はチームの人を見回してお辞儀した。

サーブしたボールが飛んでくる、ソレを難なく上げて打ち返す。

今打ったのはライトの方で俺ではない。

あちら側でもボールは拾われ高く上がる。

「俺によこせや!」

宮先輩がスパイクを打ちそのボールは床につく前にバックによって拾われた。

「亮!」

春が俺の名前を呼ぶ。

「来いっ!」

俺はネットに向けて垂直に飛び上がったボールを思い切り打ちつけた。

ボールは誰に拾われることも無くコートの中で弾んだ。

「っし!」

思わずガッツポーズ!

ここで恵とか和哉先輩が俺の頭をくしゃくしゃと撫でてくれるのだが生憎もうそんな事はない。

「春ナイストスー!」

「亮もナイス。」

パチンと両手を合わせる。

「・・・・・・・・・・。」

あれ?みなさん止まってらっしゃいますが?

「お前・・・今何したん?」

眼を大きく開けて此方を見るのは宮先輩。

「何って・・・スパイク打ったんですけど。」

「ちょい待ち・・・。そないな事あらへんで俺お前のボール止めるため跳んだやんか!」

いや、そんなこと言われても俺は打つので精一杯だったんで。

「聡も見たやろ!」

「み・・・見たよ。」

聡先輩も唖然としながら俺を見ている。

「・・・俺なんか変なことやりました?」

首を傾げて春を見るが春も同様に首を傾げていた。

「ちょ・・・ともう一回スパイク見せてくれる?」

そう言って聡先輩はボールを取る。

「っす!」

俺は春があげたボールを同じように打った。

「・・・なんちゅージャンプ力・・・。」

「それもサウスポーだ。」

口を開けながらただ驚いているバレー部員。

「あ。聡先輩違います。俺、両利きなだけです。」

もちろんめっちゃ練習はしたけどね。

その後、俺は嫌ってほど跳んでボールを打ちまくった。

まぁ、スパイク練習は好きなのでラッキーだ。

「ハァハァ・・・。」

もう打てましぇん・・・。

流石に三日も練習休んだから身体がグータラしちゃったようだ。

一応走ってはいたんだけどなぁ。


「亮・・・。」

「もう一本スか?聡先輩?」

俺が方で息をしながら聞くといきなりガバリと抱きついてきた。

「ちょ・・・!!」

「よくバレー部に来てくれたね!!ありがとう!!」

そして今度は握手をしてブンブン振られる。

「は・・・はぁ。」

つーかバレー部入る気満々だったし。

「よし、じゃあ今日はここまで!」

聡先輩がみんなに声をかける。

ぞろぞろと皆が集まりだした。

「あ・・・聡先輩っ!俺一人でモップがけしますからちょっと十分くらい残っててもいいですか?」

「ん?」

「一人でってお前アホか?どんだけ大変かわかっとんのか?」

「分かってます。」

「別にいいけど・・・本当に大変だよ?」

「っす!」

「そんなに言うならいいけど。」

そしてバレー部員は一列に整列してコートに挨拶した。



「よっしゃ!」

俺はいそいそとバレーシューズからランニングシューズに履き替える。

「あ。遠藤先輩、ちょっとストップウォッチ貸して貰ってもいいですか?」

「はい。」

それを首にかけようとすると横から手が伸びて来た。

「タイム測るの?」

「春・・・着替えに行って良かったのに・・・。」

「・・・みんな亮が何やるか知りたいみたい。」

春の後ろを見てみればズラリと並ぶバレー部の方々。

「げっ・・・。」

大したことやるわけじゃないのに・・・。

俺は一つ息を吐いてストップウォッチを春に渡した。

「じゃお言葉に甘えて。ここから俺が走ってまた戻ってくるからソレのタイム測って。」

俺が今立ってるのは体育館の隅、そして指差した先はそこから一直線先。

すなわち体育館を対角線に走るって訳。

「じゃ・・・スタートかけて。」

俺がスタンディングスタートの構えを取ると春は手を上げた。

ソレが降ろされると共に足を蹴る。
作品名:RED+DATE+BOOK02 作家名:笹色紅