RED+DATE+BOOK02
「はっ!明日からお前と同じ制服着るから草にはなんねーよ!」
「てか・・・前の学校はずっとそのかっこだったんだろ?草ってあだ名つかなかったのか?」
「つくかボケッ!」
俺についたあだ名は草なんてかっこ悪ぃもんじゃねーよ!
「お前・・・口わりぃよな。」
「お前に言われたくないっつーの!」
「なんつーか・・・外見とそぐわねぇつーかそのまんまつーか・・・。」
「どっちだよ?」
「丁寧な言葉使ってみ?」
「なんででござるか?純平様。」
「つか、時代劇じゃん。」
「なんででございましょうか?」
「やっぱ似合わねぇわ。」
そういって首を振る純平。
本当になんですかこの人は。
いきなり人の事を草なんていう子に育てた覚えはありませんよ!
そんな馬鹿みたいなことを考えながらやっぱこのクラスはいい友達出来そうだぜと喜んだ。
放課後俺は春と一緒に体育館へ向かった。
楓は委員会があるらしく今度練習見に行くからね。と笑顔で違う教室に向かっていった。
「バレー部は人気あるんだって?」
「・・・そう・・・かもしれない。」
「人数はどれくらいいるんだ?」
「十五人くらい。」
「へぇ~。でも・・・人気があるって割には少なくねぇ?」
「人気なのは人だから。部活が人気ってわけじゃない。」
その言葉にギャラリーにずらっと並んだ人々を思い出した。
「あ~。あれやりにくくねぇの?」
あんな人がいっぱいいる中でやるのは結構嫌だなぁ。
試合とかじゃなくて練習なのに。
「俺は苦手だ。」
「だよな~。」
「亮はシューズはあるの?」
「もち!ジャージも持ってきた!」
「じゃあ練習一緒に出来ると思う。」
「マジ!?えっと・・・キャプテンは誰なんだ?」
俺と春は体育館の入り口で靴を脱いで中に入った。
既に何人かのバレー部が集まっている。
「あの人。」
春はスッと長い指を体育館の隅にいる二人の人物へ向けた。
そこには遠眼でも分かる金髪と黒髪がいた。
「福野部長。」
春についていく様にして部長の元に行く。
「・・・ん?」
振り向いたのは黒髪の好青年。
短く切った髪がより爽やかぶりをかもし出している。
「入部希望者です。」
優しそうな眼が俺の頭を見て、次に眼を見る。
「齋藤亮です。」
日本人特有の黒い瞳を見ながらお辞儀をした。
「齋藤って・・・「葵んとこ殴ったやつやろ!!」
言葉を割って入ってきたのは一緒にいた金髪。
そいつは遠慮なしに俺のところをジロジロ見てきた。
やろ・・・って事は関西人か。
俺はそれに苦笑いをした。
「バレー部に入部希望です。出来れば今日から練習参加したいんですが。」
俺がそう言うと黒髪と金髪は顔を見合わせた。
「うーん・・・でも今日は見学からのほうがいいかもしれないね?」
少し悩んで言葉を発したのは黒髪。
「そうですか。」
俺は些かしょんぼりして頷いた。
しかし
「いいんとちゃう?身をもって知ってもらったほうがいいやん。」
と金髪がニヤリと笑いながら言う。
「身をもって?」
俺の疑問に金髪は嫌な笑みを浮かべて詰め寄った。
「ウチの練習量は半端ないで。誰かのファンなんかで入ったんならやめとき。んなチンマイ身体で楽に
出来る部活やないねん。」
「コラ!ミヤ!!」
・・・ちんまいだと・・・。
それはアレですか?
小さいって意味ですか?
俺の笑顔が引きつる。
待て、亮!此処は我慢だ!
俺は小さく息を吐いた。
「じゃあ、体験したいです。今日の練習参加してもいいですか?」
そう言うと二人はきょとんとした。
「お前俺の話聞いてなかったやろ?」
眉を寄せて言う金髪。
「聞いてました。身を持って体験したいっス。」
つらい練習なんて百も承知だ。
それなら早いうちから慣れた方がいい。
「もちろんだよ。僕は部長の福野聡[フクノサトシ]。こっちは副部長の宮辰朗[ミヤタツロウ]。」
いい人そうな部長が福野先輩で金髪関西人が宮先輩か。
「はっ・・・倒れても知らんで。」
訂正、ムカツクやつが宮先輩だ。
俺は福野先輩だけに一礼をして春に部室に連れてってもらった。
「亮のロッカーは無いから此処の机に置いておけばいいよ。」
「おう。」
俺は上着を脱ぐ。
「それ・・・亮のじゃないの?」
春は不思議そうな顔で首を傾げた。
「ああコレ?」
俺は明星高校の上着を持ち上げてぺらりと裏を見せた。
「実は先輩のなんだ。お下がりで貰った。だから制服買ってねぇの。」
どうやら春は上着の裏に書いてある名前をみたらしい。
そこには齋藤亮ではなく霞んだ字で[大月]と書かれてある。
大月・・・大月翔[オオツキカケル]、ちょっと遠くに行ってしまった人だ。
俺にとってとても大きな人だった。
「あとコレも先輩のなんだぜ!」
そう言ってシュルリとネクタイを取る。
多分殆どのヤツが緑の制服にミスマッチだろうと思うが、実は俺のタイはピンクのチェックだ。
「前の学校の先輩?」
「そう!ん~。前の学校は基本的に皆身につける色が定着しててさぁ。まぁ・・・俺は緑だったんだけど。
転校したらみんなが色々くれたんだよな。」
タイは結構前から桜先輩に貰ったのだけれど。
「ま。俺の宝物ってやつ。」
ニシシと笑うと春は穏やかに笑い返してくれた。
「じゃあ、まずは体育館五周ね。」
部員全員で走ってその後体操、ストレッチに入る。
「よぉ、草。」
「・・・・・・・・・・・。」
俺が春とストレッチしてると目の前にはナイキのシューズ。
草って・・・言われたの二回目。
しかしじゅんペーとは違って目の前の男はあからさまにからかいと馬鹿にした感じが含まれている。
「お前の事や。」
そう言ってぺシンと頭を叩かれた。
「何スか?」
ムカつくことに金髪のムカツクやつ、宮先輩は身長が高い。
俺は必然的に見上げる形になる。
春もじゅんぺーも眼を見るときは見上げるのだがこいつを見上げるのはなんとなく嫌だった。
「次のメニュー体育館で吐くなんて痴態みせんようにな。」
この人を見下してる笑いが嫌いだ。
「はぁ。」
俺は適当に頷いて宮先輩の後姿を思いっきり睨んだ。
「亮・・・次のメニュー・・・。」
俺の背中を押しながら春が声をかける。
「吐くって事は持久走かなんかだろ?」
「そう。合計7キロ走るんだ。」
周りでは上着を脱いだりしている人が多い。
「疲れたら途中で休んでもいいからね。」
此方にやってきたのはぶちょーの福野先輩。
「わかりました。」
でも、途中で止めるなんて事はしたくない。
コレでも身体は鍛えてきたんだ。
持久力なんかでぺーぺー言ってなんていられない。
「じゃあ一周目行きまーす。」
片手にホイッスルを持ったマネージャーの遠藤先輩が指示を出す。
みんなわらわらと並びだす。
そしてホイッスルが鳴り響いた。
皆で纏まって走り出す。
一周、二周と走り三周目。
俺はいたって普通に走っていた。
「草~まだ脱落しぃへんのか?」
作品名:RED+DATE+BOOK02 作家名:笹色紅