RED+DATE+BOOK02
「改めてよろしくお願いします。1-2の皆様。」
クラス中の顔を見回してお辞儀をすれば赤面する者多発。
なんだ!?みんな赤面症か!?
「あ。春・・・俺こんなんだけど普通にバレー部入れっかな?」
「大丈夫・・・だと思う。」
その言葉きけりゃ一安心だ。
お弁当も全部綺麗に食べてハンカチで綺麗に包む。
そろそろ桐生さん着いたかな~?
そう思って外を見てみる、しかし。
「亮君!!」
桐生さんの声は教室の扉のほうから聞こえた。
「は・・・はれ?桐生さん?」
もしかしてこんな所まで迎えに来ちゃったのか!?
うわ・・・そんな・・・メールくれたら俺がダッシュで門まで言ったのに。
桐生さんは肩で大きく息をしていた。
俺の濡れている緑の髪と眼、そしてランニングシャツの姿を見て眉をひそめた。
「亮君・・・。制服はどうしたんですか?」
「や。ちょっと濡れちゃってさ・・・だから桐生さん呼んだんだけど。」
桐生さんがお弁当届けてくれてからそんなに経ってなかったし。
「このままお帰りになりますか?」
「うん。楓、悪いんだけど先生に言っておいてくれるか?」
「え?う、うん。もちろんだよ!それより・・亮。」
楓は戸惑ったように桐生さんを見上げた。
「お久しぶりですね、綾瀬君。」
にこりと笑って桐生さんが楓に挨拶をする。
「お・・・お久しぶりです、桐生先輩。」
「お久しぶりって・・・ああ。桐生さんは楓の先輩なのか!」
そうかここの学校も小中高ってあるから知ってる事もあるのか。
桐生さん人気あったって言ってたしな~。
「亮君そんなカッコじゃ風邪引きますからそろそろ行きますよ。」
「あ。うん。」
そして桐生さんは自分のスーツを俺にかけてくれた。
・・・絶対高いぞコレ。(←貧乏性)
「じゃあな。」
そして俺は唖然としているクラスメートに手を振って車に乗った。
「バレてしまわれたんですね。」
「うん。まぁ・・・あ!このことは親には・・・。」
濡れて帰ってきたなんていったら絶対心配するし。
「言いませんよ。その染みもどうにかなります。」
「マジ?よかった。」
この上着は大切な物なんだよね~。
綺麗になるなら良かった。
俺は安心して上着を抱きしめた。
「亮君。」
「ん?何、桐生さん。」
「辛かったら誰かに頼ってもいいんですよ。」
「え?」
「お友達でも、ご両親でも・・・そして私にでも。」
「や。別に・・・辛くは無いです。」
「そうですか。」
微妙な沈黙が流れる。
少し嫌な感じだ。
「ん?」
俺が何か言わなきゃ・・・と思案していると制服のポケットから振動を感じだ。
「あ。」
犯人は携帯電話でピンクの光を放ちながら着信を告げている。
俺はちらりと桐生さんをみると桐生さんは微笑んでどうぞ出て下さい。と言った。
「もしもし・・・。」
『もしもし~齋藤君のお宅ですか~?』
「・・・ええ。そうですけどって、お前は恵だな。」
久しぶり・・・とは言っても3日ぶりほどの幼馴染の声だ。
『つか、なんで出てんの?俺留守電にメッセージ入れようと思ってたのに。』
「早退したんだよ。お前こそなんでかけてんだ?授業中じゃねーの?」
『それが1、2年って自習~。だから体育館に来てるんだけど・・ちょ・・・待ってくださいよ。』
なんだか電話の向こうが騒がしい。
「恵?」
俺が疑問に思って名前を呼ぶと恵よりはるかに高い声が聞こえてきた。
『亮ちゃん!!早退したって大丈夫??どこか痛い所でもあったの??』
「桜先輩!?」
慌てたような心配そうな桜先輩の声が聞こえる。
『そうだよ~!ちょっと恵、邪魔しないでよ!!亮ちゃん何かした~?』
後ろのほうでは恵が「ソレ俺のなんすけど・・・」とごちている声がする。
「何でもないよ。ピンピンしてる。」
『おぅ!亮!篠宮のバレーはどうだ?』
桜先輩と話していたはずなのに次に聞こえたのはハスキーな男らしい声だ。
「和哉先輩?俺まだバレー部行ってないんだよ~。」
『ちょっと!和哉!俺が話してたんだよ!』
『うるせぇな~・・・亮、桜がうるせぇから桜に変わる。』
『俺の携帯・・・。』
次々と聞こえる明星高校の一面。
「ははははは・・・。」
思わず声を出して笑ってしまう。
あまりにも変わって無さ過ぎて。
『亮ちゃん?おかしいことあったの~?』
俺はみんなの声を聞いてたら笑ってた、そして・・・
「あ・・・あれ?」
ポタポタと落ちる水。
頬を伝うのは涙だ。
なんで涙なんか・・・。
隣で桐生さんも運転してるのに。
『・・・亮ちゃん泣いてるの?』
「っそんな事ない・・・。」
『馬鹿だな~。俺が、亮ちゃんの事分からないはずないのにそんな事いうんだ。』
電話で・・・それもちゃんと笑ってたはずなのになんで分かるんだろう?
「桜・・・先輩、俺・・・」
初めてだった。
あんなに沢山の人から悪意を受けたのは。
怖かった。
寂しかった。
辛かった。
俺はどれだけこの人たちに守られてきたんだろう。
『亮、俺はずっと亮の事大好きで応援してるから・・・だから負けるな。』
桜先輩は俺より身長だって低くて顔もすっげー女っぽくて可愛い。
でも。それ以上に・・・
強くて
かっこいい。
『何?お前泣いてんの?』
「うるせぇ、恵じゃあるまいし泣くかよ!!」
今度は恵だ。
鼻をすすりながらそんな事言っても信じてもらえないだろうけど。
桜先輩の文句を言う声も同じくして聞こえる。
『お前泣き虫だもんな。俺がケーキ食ったときも泣いたし。』
「そんなガキの頃の話覚えてっかよ!!」
よくよく覚えてますよ。
恵が俺のケーキを横取りしたときの事は。
『つまんねぇ事で泣くんじゃねーよ。あーほ。いてっ!何すんすか、桜先輩!?』
どうやら恵ちゃんは桜先輩に殴られた模様です。
ざまみろ。
『亮・・・お前いじめられたのか?』
次に聞こえてきたのは和哉先輩の声。
「えっと・・・。」
『俺が乗り込んでお前いじめたやつシメるか?』
「やめてください。」
和哉先輩ならやりかねない!!
マジ和哉先輩に冗談はない!!
「ははは・・・もう・・・皆俺に優しすぎる・・・。」
『そうか?普通だ。』
『俺は亮ちゃんにしか優しくないからね。』
『今更俺の偉大さに気づいたか。』
皆それぞれ違う優しさがある。
俺・・・すっげぇ幸せ者だ。
「俺は大丈夫!みんなも頑張って!」
そして電話を切った。涙はもう止まっていた。
「・・・いい友達ですね。」
桐生さんがハンカチを差し出してくれる。
「うん。」
俺はソレを少し照れくさい気持ちで受け取った。
強烈な色だった。
色彩のない、モノクロームの世界に映った生命の色。
強い意志を持った存在感。
「気にいちゃったのかな?齋藤亮君を?」
放課後、生徒会室。
茶化すように生徒会副会長の加賀が笑う。
「・・・そんなんじゃねーよ。」
コレは嘘。
俺の頭の中は昼休みからあのガキに支配されている。
作品名:RED+DATE+BOOK02 作家名:笹色紅