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RED+DATE+BOOK02

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「・・・藤堂先輩達がいるんだ・・・。亮・・・やっぱり違うところのほうがいいよ。」

「でも・・・。」

既にシャツには黒いシミが出来始めていた。

コレ漂白したら落ちるよね!!?

そんな事を思っておろおろしていると青木が一歩前に出た。

「齋藤亮、俺について来て。」

そういって俺の腕を引っ張るのは青木。

「・・・青木、俺もお前の所春って呼ぶからフルネームじゃなくて亮って呼べよ。」

今の状況でこんな事を言うのはどうかと思うんだけど気になったので。

春はコクンと頷いてまっすぐ前を見た。

わらわらと噴水を真ん中にして集まっていた群衆が春と俺を見て避けていく。

ヒソヒソ話が始まり俺のずぶ濡れの姿に失笑する者もいた。

そこにあいつの姿を見た。

俺に水をかけた女みたいな顔のヤツを。

そいつは口に手を当てて笑っていた。

俺を嘲笑っていた。

俺の体と心は段々冷たくなっていったが手に感じる春の温もりだけがやけに熱かった。

春がピタリと止まり、俺も顔を上げる。

目の先にいたのは生徒会長。

噴水の縁に座って優雅にランチタイムだ。

そいつは俺の姿を認めると馬鹿にしたように笑った。

「はっ・・・この時期に水浴びか?」

好きで濡れてんじゃねぇよ!クソ野郎!!

反射的に会長を睨む。

「亮、ここで大丈夫?」

会長から俺を見えなくするように春が振り向いた。

「あ・・・ああ。サンキューな。」

「俺は平気。」

手を俺の頬に持っていって辛そうな顔をする。

ああ。コイツ・・・優しいんだ。

人の気持ちが分かるやつなんだ。

春の気遣いに触れて俺の心は少し軽くなった。

心配そうな春に笑って眼鏡を取った。

「ソレ持っててくれるか?」

眼鏡を春に渡して俺は噴水の縁に手をついた。

もちろん会長からはなるべく離れてだ。

回りは先ほどから変わらずヒソヒソ声と馬鹿にしたような笑い声が聞こえている。

噴水の中の水は綺麗だ。

其処映る自分の顔。

それに向かって俺は頭を突っ込んだ。

やっぱまだ水は冷たい。

水の中で目を開いてわしゃわしゃと自分の頭をかく、途端に視界が黒になる。

それにビビッて再び目を閉じて乱暴に髪をすすいだ。


「っぷは!!」

息の続くまで顔を突っ込んでまた息を吸って水に沈む。

水が黒く無くなるまで続けてから状態を起こした。

「超つめてぇ!!」

プルプルと頭を振って水を飛ばす。

シャツは半濡れの状態だったので脱いでしまった。

頭が冷たくなって思考も冷めたところで俺はハッと気づいた。

心の置くからふつふつと怒りがこみ上げてくる。

「お前ら!!!!」

指差した先は会長のファン達だ。

そいつらは目を丸くして俺を見ていた。

「こんな姑息なイジメやってんじゃねーよ!!小学生か!?第一お前らの行動のせいでお前らが好きな

ヤツの好感度下げてるって気づかねぇのか!!?それに俺はこの会長なんて好きでも何でもねぇ!!む

しろ嫌いだ!!金輪際こんなヤツの事で俺に嫌がらせすんな!!疲れる!!楓の事も春の事も、決める

のはあいつらと俺だ!!部外者が口出してんじゃねーよ!!そしてお前!!!」

指差した先は俺に水をかけてくださった先輩。

「校舎裏でリンチなんてしてんじゃねーよ!!喧嘩してぇんならタイマンはれ!!お前だって男なんだ

ろうが!!最後にアンタ!!」

座ったまま唖然としている生徒会長様だ。

「自分のファンくらいちゃんとしておけよ!!自分の行動でどのくらい人に迷惑がかかるのか考えろ!

!」

一気にまくし立てて息を吐く。

嗚呼・・・スッキリした。

「行こうぜ、春。」

そう声をかけると春は自分の上着を脱いで俺にかけてくれる。

「や。濡れるから。」

「亮が風邪を引くから。」

「・・・ありがとう。」

俺と春は会長のファンよりちょっと離れてる所にいる楓に向かった。

「楓、上着サンキューな。」

楓に持っててもらった上着を広げて黒いシミを探す。

あ~。コレくらいだったら綺麗になるよな。

なんにしても新しい制服じゃなくて良かった。

「り・・・亮だよね?」

「ん?」

ビックリしている楓に笑いかけた。

楓はポッと赤くなる。

「ああ。髪の毛な。言っとくけど地毛じゃねーぞ。緑に染めて黒のカラーヘアスプレーやってたんだ。



「眼も・・・。」

「眼?」

あっちゃ~・・・もしかしてコンタクトはずれた?

カラコンて確か高いんだよな~。

まぁ、いいか。

「コレは自前。一先ず教室行こうぜ。」

何故だかシンとしている中庭を背に俺たちは教室に戻った。


「ただいまー。」

なんてふざけて教室のドアを開ける。

クラスの中にいる全員が俺を見て止まった。

わぉ、ドッキリ大成功?

そりゃ七三が緑の髪で戻ってきたらビビるってな。

「あ。じゅんペーありがとう。」

机に座っている純平はパックジュースを手に持ちながら固まっている。

俺はお構い無しに純平の傍に置いてあった自分の弁当を持って自分の席に座った。

「へ・・・へくしょん!」

いくらシャツ一枚っつても馬鹿にしちゃいけませんね。

確か鞄の中にランニングシャツが入っていたはず。

俺は春に上着を返してシャツを着た。

「よし、じゃあ、飯食べながら話しますか。」

あ。その前に・・・このままじゃ流石に授業受けられないから帰ろうと桐生さんにメールを送る。

楓と春は黙って椅子に座る。

そして俺は何故あんなかっこをしていたのか話した。

「・・・で俺は全員坊ちゃん刈りと七三だと思ったわけ。」

「・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・。」

楓は口をあけたままフリーズ。

春は普通に無表情でパンを食べていた。

そして・・・盗み聞きしていたのかクラスの大半のヤツは震えている。

「笑いたい人は笑ってドウゾ~。」

控えめに叫ぶと大爆笑が起こる。

なんかこれだけ笑われるとちょっと凹むよな。

「じゃあ・・・亮はそれだけの為にあんなかっこを?」

「ああ。後・・・桐生さんには七三のままの方がいいって言われた。」

言われたけどしょうがないよね。

水かけられちゃったし。

どっちにしても明星の制服着ていた事態で俺は目立ってたんだよ。

そりゃ紺の中に一人だけ緑じゃあな・・・。

「・・・眼・・・は自前って・・・。」

言いづらそうに楓が口を開く。

「ああ。気持ち悪りぃ?」

たいていのヤツは俺の眼を見るとギョッとするからな。

まぁ・・・慣れてもらうしかねぇんだけど。

そんな心配をしていたのだが、楓はブンブンと首を横に振った。

「っ全然!!!全然そんな事ない!!すっごい綺麗だよ!!」

「・・・そう・・・ですか。」

綺麗って言われるとは思わなかった。

ものすごい楓の勢いに俺は少々身を引く。


「そんな感じでコレが俺の本当の姿~。ナチュラルスタイル~。」

弁当をつつきながらそう宣言。

てか、今日の弁当、絶対おふくろが作ったのじゃねぇ!

めっちゃ美味いし綺麗だし・・・まかないさんにでも作ってもらったのかな?
作品名:RED+DATE+BOOK02 作家名:笹色紅