RED+DATE+BOOK01
人気者の噂ってのは尾ひれ背びれ足ひれまでついてますよ。
『たぶらかした』って・・・この容姿でたぶらかされるヤツを俺は見たいね。
七三フェチとかだったらいいのか?
たぶからされたならまずカイチョーのセンスを疑えよ。
もうカイチョーと副会長には関わらないほうが懸命ですね。
自分に言い聞かせてうんうん頷く。
「着いたよ。」
それに首を傾げながら楓は俺の制服を引っ張った。
「あ。やっぱ此処だったんだ。」
来た所は昼休みに迷った体育館。
「ギャラリーにはどっから上れるんだ?」
ひょこりと二人で顔を入れると凄まじい歓声が上がった。
「うわ!なんだコレ!!?」
ギャラリーには沢山の人人人!!!
皆それぞれに何かを叫び手には芸能人(ジャ●ーズ)とかのライブで使う顔がプリントされているうちわ
やらを持っている。
「バレー部は人気があるんだよー!カッコいい人が多いんだ!」
「へー!マジで?そりゃすげぇな!!」
二人とも大声で喋る。
もしかして顔が良くなくちゃ入れなかったりするんですかね?そんな事ありませんよね?(ちょっと不安
)
「上がれる所なんかあるのか??」
「う~ん・・・だからって此処にいたら邪魔だよね?」
俺たちがいる所はちょうど出入り口のところだ。
二人でうんうん考えていたらジャージ姿の人がこちらに向かってきた。
「綾瀬君が今の時間帯に来るのは珍しいね。春君呼ぼうか?」
その人はどうやらマネージャーみたいだ。
首から笛をかけて身長は俺と同じくらい、顔はなんだかおっとり系だ。
楓と俺を見てにっこりと笑っている。
「いえ、遠藤先輩。今日はこっちの彼が見学したいって。」
「斉藤亮です。入部希望なんですが。」
遠藤先輩と呼ばれた人は俺の顔をみて少し驚いていた。
「藤堂君を殴ったっていう・・・。」
げ!!先輩までしってんのかよ!!?
「け・・・見学だめですか??」
楓は慌てて間に入る。
遠藤先輩は楓の態度に気づいたのか苦笑して首を振った。
「ああ。ごめんね、只、藤堂君を殴ったなんていうからどんな子かな?て思っただけなんだ。そうだな
~・・・入部希望ならステージで見ていきなよ?よく見えるよ。」
「ありがとうございます!!」
俺たちは靴を脱いでそそくさとステージへ向かう。
「あ。亮、あれが春だよ!」
楓が指差す先を見てみれば180cm以上ありそうな身長を持つスレンダーな体躯をしたやつ。
額に太いヘアーバンドをして黒い前髪を上げている。
ソイツは楓に気づいたのか手を上げようとして止めた。
いや、正確に言ったら俺の顔を見てあげた手を止めたか。
凄く驚いた顔をしたのもつかの間こっちに歩いてくる。
「楓・・・なんか・・・アイツ俺のところ睨んでねぇ?」
「・・・亮、何かしたっけ?」
「初対面だっつーの。」
どっからどうみても俺のところを睨んで歩いてくる青木。
「俺・・・逃げていい?」
「だめだよ。ちゃんと自己紹介しなくちゃ。」
まぁ、楓の友達なら俺も友達になりたいと思うけど・・・・。
怖いし!!!
絶対俺のところ睨んでるよ!!
そんな事言ってる間に青木春は俺の前まで来てピタリと止まった。
10cm以上の身長差なので必然的に俺はソイツを見上げる。
「齋藤亮?」
ソイツはカッコよかった。
男性的なカッコよさもあるが色で表したら白。
静かで鋭いしかし優しい感じを持っていた。
呼ばれた名前はもちろん俺のフルネーム。
まぁ、俺ってば有名人?
バレー界ナンバーワンの学校の生徒にまで分かっちゃうくらい??
って俺は高校の公式戦にまだ出てねーからそんな事あるわけない!!
これは選手じゃなくて・・・・。
くっそー!!また人気者絡みで悪役は名前を覚えられたかよ!!?
だが、コイツが発した声は些か震えてはしなかったか?
「ソウデー・・・ってうお!!!」
『ソウデース』と最後まで言えなかったのは事もあろうに目の前のデカイヤツ、楓の友達らしくて名前
は青木春が俺に抱きついてきたからだ。
「っ・・・会いたかった。」
会いたかった・・・・?
ええええ!!?俺どっかであんたとお知り合いになりましたっけ!!?
思い出せませんけど・・・。
というか苦しいですー!!離して下さいー!!
「か・・・楓・・・。」
どうしようもなくて隣にいた楓に助けを求める。
楓は唖然としていたが俺の声を聞いてハッと意識が戻ったみたいに目を大きくした。
「春、春。亮が苦しがってるよ。」
楓が慌てて春の腕を引っ張る。
「ふはっ!」
腕の力が緩んで押し付けられていた胸板から顔を離した。
ずり落ちそうになる眼鏡を上げる。
「わ・・・悪い・・・。」
「や。平気・・・・」
そして俺は気づいた。
体育館と言う広い空間の中、声を発していたのは、俺と楓と春だけという事に。
これは・・・まさか・・・
人気者再び!!!???
恐る恐る周りを見るとバレー部の部員も先ほどまで五月蝿いほど騒いでいたギャラリーも全員静止して
此方を見ている。
え!?俺たち意外時間が止まっちゃったの!!?
そんなわけあるはず無い。
これはヤバイぞ。
ヤバ過ぎる・・・。
「・・・か・・・楓さん・・・すみませんが俺・・・」
帰らせていただきます!!!
そう叫んで出口にスタートダッシュ!
靴と共に置いてあった鞄を掴んで靴もつま先だけ突っ込んだ感じでその場から逃げ出した。
後ろで楓が俺の名前を呼んだ気がしたが戻るなんて事できるはずもなく校門まで走り続けた。
ビックリした・・・。
いきなり春が亮に抱きついた。
ボクは春とは中等部からの付き合いだけどこんな行動はじめて見た。
抱きつかれた亮はというと回りを見て顔を青くしながら凄いスピードで出て行ってしまった。
反射的に呼んだけど戻っては来ない。
「・・・春・・・。」
ボクは何故亮にいきなり抱きついたのかと聞こうとしたが春はぼーっとしててそのままコートに戻って
いってしまった。
ハァハァハァ・・・。
本当に全力疾走。
何故こんなに疲れてるかって言うと体育館、校舎から校門までの道のりが長い!!
まっすぐな並木道を全力疾走。
俺はポケットから携帯電話と名刺を取り出し目当ての人物に電話をした。
「あ。桐生さんですか?俺、齋藤亮です。あの・・・学校終わったんですが。」
『かしこまりました。校門の前で待ってていただけますか?』
「あ。はい。」
そして電話を切る。
てか・・・今から家を出たとすると約40分校門の前に立ってなきゃいけないのか!?
そんな俺の心配ははずれ黒のベンツはすぐに来た。
俺が後ろのドアを開けようとするが何故か桐生さんが運転席から出てくる。
そして俺があけようとしていたドアを開けてくれた。
「あ。すいません、ありがとうございます。」
慣れない動作にドギマギしてしまうが桐生さんはそれが当然だというふうに振舞っていた。
「学校はどうでしたか?」
車が走り始めて直ぐに桐生さんが話しかけてきてくれる。
作品名:RED+DATE+BOOK01 作家名:笹色紅