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RED+DATE+BOOK01

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「んー。友達は出来ましたけど・・・ちょっと大変でした。」

「最初のうちはしょうがないのかも知れませんね。」

「はやく慣れたいもんです。」

「あそこの学校は大変でしょう。」

俺はそこに引っかかりを感じて運転している桐生さんを見た。

桐生さんは若くて黒くて長い髪を後ろで緩く結っている。

黒のスーツを着ているがなんだか和っぽい人だ。

「桐生さんもあの学校の事知ってるんですか?」

「ええ。卒業生なので。」

ってことは・・・・。

「桐生さん時代もモーホーがいたって事ですか?」

ストレートな俺の質問に桐生さんはクスクス笑った。


「そうですね、いましたね。・・・それとわざわざ敬語にする必要ありませんよ、亮様。」

「でも桐生さんは俺より年上だし?あ。それなら俺のところも亮って呼んで欲しい。」

「呼び捨ては出来ません。旦那様のお孫さんですからね。年上などもお気になさらないで下さい。」

「じゃあ・・・せめて君でお願いします。」

「わかりました。」

「桐生さんは、モテただろ?親衛隊とかいたんだろ?」

「ええ。そうですね、いましたね。亮君には驚くことでしたか?」

桐生さんは懐かしそうに笑いながら言葉を連ねる。

「いや、俺の前の学校にもそんなのはあったけどさ。でも悪口とか陰口っていうのは無かったんだ。」

「そうですか・・・でも亮君は陰口の対象にはならなかったでしょう。」

「や~。それがどうやら俺っぽいんだよね。ダサいかっこしてるしさ・・・。あ。桐生さんはまだ本当の俺

見てないんだよね。」

眼鏡を取って震える手で目の中のコンタクトも取る、ソレをちゃんとしまった後、七三に分けた髪の毛

をくしゃくしゃにする。

「今は髪、黒に染めてっけど本当は緑なんだ。」

黒髪でも大体はいつもの俺になった。

桐生さんは俺の顔を見つめた後ハッとして再びフロントガラスを見た。

余所見運転厳禁ってね。

「前の学校は校則緩くてさ~緑の髪なんかザラにいたんだけど、篠宮はお坊ちゃま学校じゃん?絶対七

三と坊ちゃん刈りばっかだと思ったのに行ってみたら七三なんか誰もいねぇの!!」

俺は外していたピアスをつけながらぶつぶつとこぼす。

静かになってしまった桐生さんを見たらハンドルを握り締めて震えている。

「桐生さん?」

様子がおかしいから声をかけたのに桐生さんは俺の顔を見た後、我慢できないというように笑い出した



「あは・・・あはははははは!!」

「・・・・・・。」

なんだ?桐生さん・・・おかしくなっちまったのか?


そして数秒後、ようやく笑い終えた桐生さんがひぃひぃ言いながら謝った。

「すいません・・・おもしろくて。」

「いや・・・桐生さんもそんな爆笑すんだな。てか何が面白かったかよく分かんないんだけど。」

「いえ・・・でも、亮君が今のカッコで学校に行ったら人気者になる事間違いないですよ。」

「容姿で判断はして欲しくないよな。」

「でも、前の学校でもあったのでしょう?」

「容姿で判断はしてねぇと思う。俺の親衛隊長は先輩だったしさ。先輩は後輩のファンクラブなんか作

らねぇだろ。」

「一概にそうとは言えませんがね。そうなると・・・前の学校では守られていたんですね。」

「あー。守られてっていうか・・・やっぱそうなるのかな~。」

「・・・でしたら、今の学校、篠宮学園では普段の姿はお見せにならないほうがいいですよ。」

「なんで?人気者は?」

「人気者より・・・亮君の身が危険だからです。」

「へ?派手だからリンチされたり?でも紫の髪とか銀髪とかいたぜ。」

「違います。レイプされたりです。」

はて?

俺の通ってるところは男子校だよな?

「レイプって・・・婦女暴行?」

「ええ。男子校に婦女はいませんが。」

「それって・・・そういうことですよね?」

「ええ。亮君は頭がいいから分かるでしょう。」

男が男をレイプするのか・・・。

「・・・ひどいな。それも男と男なんて・・・。」

そうぼやくと桐生さんは驚いた顔でこっちを向いた。

「前の学校でも親衛隊などあったのですよね?」

言わんとしていることを悟って話を進める。

「あ、ああ。同性愛もあったぜ。でも俺ホモじゃないから。」

「でも・・・亮君を好きだったから親衛隊が出来たんでしょ?」

「うん。おれもスキだったぜ。みんな。」

けろりと返すと桐生さんは難しい顔をする。

「それは・・・」

「優しいんだよ~。応援してくれるしさ!俺の親衛隊長の先輩は桜って言うんだけどな可愛い先輩だっ

たし。」

あ。桜先輩からのメール返さなきゃ。

ついでに恵のも。

「・・・そうですか。」

「でも、こっちの学校で七三の方がいいって言うなら明日も七三で行くよ。」

てか、今更本当のカッコで行っても違う意味で恥ずかしい!

家に着いた俺は桐生さんにありがとうと言って車を出た。











次の日。



昨日と同じダサいかっこで登校。

制服はまだ届かなくて明星高校の深緑のブレザーをきている。

篠宮高校の制服は紺色のオーソドックスなヤツ。

でも有名なデザイナーがデザインしたらしく色んな体型のヤツがきていてもあまり変に見えない。

俺が思っていたより大分服装に寛大なこの学校は初夏になりそうなこの時期上着を着ないでセーターな

んかを着ているやつもいた。



けっこーお洒落さんなんだよな~。

正直言って今の自分のカッコに凹む。

ソレならば普通のかっこでこればいいじゃないか!と思うがどうやら俺は目をつけられてしまったらし

い。

校門で車から降りた瞬間にその場の空気が変わるのが分かったから。

こうなりゃ極力目立たない方がいい!

七三でも友達が出来ることはわかったし。

そー言えば楓の友達の青木春ってのは何だったんだ?

昨日の夜からずっと考えてるけど全然わかんねぇ。

恵にも親にも聞いたけど分かんないって言ってたし。

うーん。

ま、本人に聞けば分かるよな。

そして俺は校舎に向かった。

そう、行きたかったのだが・・・

し・・・視線が突き刺さってます・・・。

コレは・・・あれですか?

自意識過剰じゃなくて皆俺の所見てるんですよね?

息が詰まる。

正直これはつらいよ・・・。

だって悪意がビンビン伝わってくるんだもん。

校舎まであと数十メートル。

おいおい・・・なんで校門からそんなに遠いんだよ?

俺はいてもたってもいれなくなり道をそれて建物の影に身を潜めた。

コンクリートの壁に背中を預け溜め息を吐く。

あんなに悪意のこもった目を向けられたのは初めてだった。

それも多いったらありゃしない・・・。

原因は・・・生徒カイチョーの一見か、楓と友達になったことか・・・それとも青木春か。

・・・全部なんだろうな。

もう一度深い溜め息を吐く。

携帯をパカリと開いてアドレス帳を出すと其処には自分に優しかった人々の名前が。

あーあ。

なんで俺あの人達と別れて転校なんかしてんだろ・・・。


「・・・・・・・・・。」

気持ちが沈んでいくのをどうにか耐えて前を向いた。
作品名:RED+DATE+BOOK01 作家名:笹色紅