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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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追伸

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 だが返事は無い。
 ギリギリと締め上げられた耕介はもはや声すら出せない状態になっていたのだ。

 始めは床に倒れ転がっていた耕介だが、やがて全く動かなくなった。
 セーターはやがて自らをほどいて髪の毛へと変じ全てが耕介に巻き付いた。
 そして黒い塊は、ギッ、ギッと音を立てながらどんどん小さくなって行くのだ。
『ねぇ、どうしたの!?』
 骨の折れる乾いた音や内臓の潰れる不気味な音がその合間に聞こえているが、電話の向うの仁美にも聞こえているのかは分からない。

 耕介の入った黒い塊はまるで自分の中に埋没して行く様に縮んで行き、全体が猫ほどの大きさになったかと思うと、終にはただの髪の毛一本となって床のほこりと共に何処かに消えて行った……。


 だが、それは乃子の望んだ事では無かったのだ。
 このハナシを読んだ方々、彼女を信じてあげて欲しい。

 確かに自分の髪の毛を毛糸に混ぜてセーターに編みこんで行くなどという事は常軌を逸している事だと言える。
作品名:追伸 作家名:郷田三郎(G3)