追伸
モニターを見るとどうやら宅配便の様だった。
「こんにちは宅配便で~す。志摩耕介さんにお届け物ですがぁ?」
自分への荷物だと知っても耕介は特に急ぐでもなく、ひと通り着替えてから階下へ降りて行った。
耕介の家のインターホンは居間とキッチンと2階の廊下にあるのだ。
荷物の送り主欄には三浦乃子という名前が書かれていた。
部屋に戻って包みを開けると、中身は手編みと思しきセーターであった。
但しその出来栄えは素晴らしく、普段は貰いもののブランド品しか着ない耕介でも袖を通してみたいと思わせる程だ。
グレーを基調に様々な色の毛糸が使われているが、少しも下品にはならず、むしろ英国貴族が着ても様になりそうである。
耕介はその送り主が半月前に棄てた相手だという事も忘れてセーターに袖を通した。
『はは~ん、あの時俺の背中にあてたメジャーはこの為のものだったのか。最後にオレへの感謝のしるしに……学校も休んで……。ホントにバカな女だな。』
そのとき耕介の携帯電話が流行のメロディーを鳴らした。
出なくても相手は着メロで判っている。
「仁美かぁ? 何だよ今ごろ。また夕方に会う約束じゃん?それとも……」
ニヤリと厭らしく笑う顔には高校生らしい爽やかさなどは微塵も無い。