追伸
-帰り道-
「ねぇ、どうだった?」
並んで歩く耕介の新しい恋人、日高仁美は少し意地悪そうに微笑んで耕介の顔を覗き込んだ。
「乃子のやつ、なんか泣いてやんの。オレ、泣かれると白けちゃうんだよね」
生徒会の会計を務める秀才で、テニス部でも役こそ無いものの実力では副部長も及ばないといわれる耕介。
普段の優等生ぶりからは想像もつかないようなスレたセリフも仁美には既に驚く事ではないようだった。
そう、志摩耕介は少しだけ付き合っていた三浦乃子を棄てて、日高仁美に乗り換えたのだ。
「あ~あ、かわいそうに。あのコまじめみたいだからぁ。耕介、結構ヒドイ事したんじゃないの?」
仁美が嬉しそうに耕介の制服の袖にぶら下がった。
「人聞きの悪い事言うなよ。これでも俺は職員室じゃ優等生なんだぜ。乃子だってまさかオレが本気だなんて思ってないでしょ? それじゃあんまり身の程知らずってもんだし」
「むしろ良い経験をさせて貰ったと感謝して欲しいよ。だってあいつの趣味知ってるか? 読書と編物だぜ。信じらんないだろ?」