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猫になって歩けば棒に当たる?

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「あらあら、わかってしまわれましたか。とりあえず黙ってきいててくださいましねー」
 にこやかな顔をしているが顔の裏ではなにか燃えるような怒気が発せっれているように見えたからここは黙って聞いていた方が良さそうだ。
「ではすいませんが続きをお願いしてもよろしいでしょうか、オオグロ様」
「お、おお」
 いつのまにかこの場を支配しているのはセンプスになっていたがわしもオオグロも口を出せないまま話は続く。

 少女はその後も何回か俺らの元を訪れ、食べ物を持ってきたりじゃれあいに来た。他にもこの段ボールの中にいると多くの人間たちと目を合わせる機会があった。好奇の目、同情の目、嘲笑の目、軽蔑の目。さまざまな人間にいろいろな目を向けられた。俺はその目に耐えられなかった。特に侮蔑や軽蔑の目、汚いものを見る目が俺は大嫌いだった。
 だから俺はその段ボールを出てもっと自由に生きる道を進むことに決めた。
 だが後の二匹はその段ボールの中でニャアニャア鳴いて、待つ道を選んだようだ。兄弟たちと別れることにまったく寂しさを感じることのなかった俺は、結局孤独でいた方が性に合っていたようだ。
 その後彼らとまた再開するんだがそれはもう少し待て。
 俺は一人でがむしゃらに生きていくことにした。居心地のいいところを探すのは苦労した。最初にいいドラム缶を見つけて落ち着けたかと思うと、でかくておっかない猫が何匹も現れて「おまえどこのもんじゃい、誰の許可得てこの場所住みついとんねん」なんてわけもわからず尻をけっとばされて追い出された。ある時は人間の店でほうほうの体でかっぱらってきた魚を待ちかまえていたように他の奴らに横取りされたこともある。何日も機会を窺っていたのにもかかわらずだ。何日もの忍耐がほんの数秒で無駄になるなんてしょっちゅうだった。
 俺が進みだした道はそんな厳しいものだった。弱い者は奪われ、強いものが至福を肥やす。そんな世界だったよ。最初は泣く泣く奪われていたものだが、俺はよほど生に執着があったのか一年程でその生活で奪われることなく生きる術、また争いに勝つ力を手にしていった。何度も血反吐を吐きながらだ。だがその暮らしにやっと慣れたころあるものを俺は見てしまった。
 あんなに汚らしくてがりがりだったはずのかつての兄弟の一匹を。
 奴はあの後、運よく拾われ飼い主ができたらしい。きらきら光る陳腐だが手入れされた首輪をつけ、飼い猫独特のなに一つ不自由のなさそうな面をしてどすどすと歩いていた。
 同じ兄弟であのときまでは一緒の境遇だった俺たちは、あの日を境にこんなにも違う道を歩んでいる。片や日々何一つとして不自由なくだらだらしていても食べるものに困らぬ生活。片や生きていくために毎日命をかけて食べ物を奪い奪われ、その日生きていくことに精一杯のつらい目ばかりに会う生活。
 なぜ? 
 あの時俺があそこを出たのは必死に生きようとしたからだ。生きていたかったからなのに、なぜ自ら動き生きようとした俺が、だれかにたかることでしか生きていけなかったあいつより苦労しなければならないのだ? 
 なぜ? 俺のなにが悪かったのだ?
 なんでこんな理不尽なんだ! 
 かつての兄弟の姿を、あのまるまると肥えた姿を眼にして以来俺は飼い猫を、奴らを拾って幸せにした人間どもに憤怒の感情を抱くようになった。
 そんな感情が湧きでてから一週間ほどたったある日俺に神が接触してきた。
 我は混沌の神。負の感情を糧に存在しているもの。
 奴は言った。
「貴様、よほど人間が憎いと見える。わしの力をやるから貴様の憎しみを恨みをもっとこの世界に訴えるのだ」
 俺は言われたことをすぐには理解できなかった。急に視界がぼんやりと霞んだかと思うと、頭の中でピーピー喚いてきやがったからな。しかも俺が憎いのは飼い猫だ。人間はその付属物でしかない。
「そうか、それでもよし。我にとってその差は些細なものだ。それで貴様もっと力が欲しくはないか?」
 問いかける口調だったが、実質ほぼ欲しいだろ。と言っているようにしか聞こえなかった。
 そりゃ欲しいさ。誰だって力があった方が生きていくに不自由なく暮らせる。
「では我から貴様へ贈り物を届けてやろう。不幸を運ぶ猫。黒猫の貴様にはぴったりな力だ」
 そう、それから俺は不幸を運ぶ。人間を不幸にし猫にしてやる力を手に入れたってわけだ。
 それから俺は野良猫の中でも特別な存在になり、夜猫族という名前を付けて野良猫のグループの頭にまでなった。.

「と、いうわけだ」
「……」
「おい、テメ―もしや寝てるわけないよな!?」
「あ、ちゃんと起きてますよ? んで太った兄弟が出てきて何だって?」
「ミケ様それはもうとっくに話し終えた後ですわ」
 当のオオグロ様はイライラし疲れたのか肩を落とし憔悴していた。
「テメーと話しても会話になりゃしねえ。本当にお前神なのか?」
「神じゃよ?」
 私の方にも目でふってきたので、一応うなずいておいた。こんな方でも一応神ですからと。
「もーいーや、とりあえず俺の力を返してくれ」
 オオグロ様はそう言いながら私達の方ににじりよってきます。
「く、くるな! わしを食ってもうまくないぞ!」
「別に食いはしねーよ。ちょっと胃の中身がすっからかんになるまで腹を殴らしてもらうだけだ」
「うげ――」
 自分が殴られるさまを想像したのか気持ち悪そうにお腹を抑え始めたミケ様。
「まだ殴られてませんよミケ様。気持ちを強く持ってくださいまし」
「い、いや。本当にお腹痛くなってきた。今日のコンビニのおにぎりは日に当たりすぎて危なそうな感じだったんだ――。やっぱりコンビニのおにぎり食べたいからってゴミ漁るのは冬じゃないときついかな」
 屋敷でもっといいものが出ているというのにこの神様はなにをやってるんだか。私とおそらく同じであろうオオグロ様も珍妙な物を見る目でミケ様を見ていた。

「ねえ、いつになったら出ていくの? もう大分魚食べて満足してるよ? チャンスじゃないかな」
「いや、待てまだ早い」
「早いってあんなお腹出して寝っ転がってる時以外のチャンスってあるの?」
 観察を続けて十分位たったころでしょうか。彼らはたくさん魚を食べて満足したのか、大胆にもお腹を上に向け寝そべっているのです。これは隙を突くチャンスではないでしょうか? 僕はそう思うのですがロイ君は首を縦に振ろうとしません。
「ねー、もうほとんど寝てるじゃないかな。今ならやっつけることできるんじゃないかな」
「あぁ、そろそろ俺の覚悟が決まったから良い頃合いだな。よっし攻めるぜ。先陣はお前に譲ろう。突っ込んでこい」
「え? 僕が先に行くの? ロイ君が先に行ってよ。ぼく怖いよ」
「なんだ、おまえ急かしてたからよほど行きたいのかと思ったのに」
「そ、そんなわけないじゃない。ただ僕はチャンスじゃないかなと思ったから」
「うん。チャンスだな今なら大丈夫だ。だからお前先行け」
「う、ひどいよぉ。ぼくそんなに戦えるわけじゃないよ。引っかいたりすればいいの?」
「ああ、そうだ。お前の強いとこ見せてやるんだ。」