おしゃべりな男
第3章 告白
占い師は前に来たときと同じ場所に座っていた。
翔太が近づいてゆくと、微笑みながら小さく会釈をした。
「翔太さん、ようこそいらっしゃいました」
「えっ、名前を覚えていてくれたんですか?」
翔太は本気で驚いた。
そして急展開で仕事の流れが変わったこと、自分が新規事業を任されたことなどを報告した。
「占い師さんのお話、大当たりでしたよ。とても感謝しています」
占い師は微笑みながら頷いた。
「あの~、それで今夜は…」
「二つ目のお願いね。恋のお悩みでしょ」
翔太は笑いながら頭を掻いた。
そして有里との出会い、彼女への思い、今日はじめて二人で会えたことなどを話した。
「僕たちこの先うまくいくでしょうか?」
「大丈夫、きっとうまくいきますよ」
「ただ、僕はあの、ちょっとおしゃべりなところがあって、
それで嫌われないかなあと心配なんです」
「心配いりません。あなたのそのおしゃべりなところが逆に幸せを呼ぶのです」
「そうなんですか…」
「でも、お忘れにならないで。これが最後のお願いですから」
翔太は半信半疑な思いで帰りの電車に乗った。
「おしゃべりなところが幸せを呼ぶなんてどういうことだろう?」
電車の窓ガラスに映った自分の姿に問いかけてみた。
自宅に帰った翔太は、早速PCのスイッチを入れた。
エリック・サティのコンサートを検索するためである。
翌週の月曜日、翔太は朝一番に有里に携帯メールをした。
『金曜日はありがとうございました。
ところでサティのコンサートが横浜であります。
もしよかったら一緒に如何ですか?』
翔太は、必要なことだけを簡潔に伝えた。
返事は思いがけずすぐに来た。