扉を開けたメール
監禁をしている人物も当然気になる。男なのか、女なのか。グループなのか。年齢はどのくらいだろうか。どんな職業の人物なのか。そして、監禁の目的は何か。部屋の内部の様子も気になる。掃除洗濯はしているのだろうか。どんな服装で暮らしているのか。バス・トイレつきとはいうが、石鹸やシャンプー、洗濯洗剤などは供給されているのか。
「テレビを観ていたら思い出しそうになりました。今映っている昔のアイドル歌手と
わたしの下の名前は同じだったような気がしています。その歌手のテレビ出演は、十何年振りかでしょう」
ラーメン屋にブラウン管式のテレビがある。報道番組らしきものが映っている。
「済みません。テレビのチャンネルを変えてもいいですか?」
「はい……どうぞ。リモコンです」
変えてみると昔の女性アイドル歌手が歌い終わる直前だった。今は三十代後半で、昔より太めになっていたが、面影はかなり残していた。子供の頃、花山もその歌手を好ましく思っていた。
だが、咄嗟に名前が思い出せない。彼はビールを飲み干して店を出た。
踏切の傍に消防署がある。二年くらい前に洗練されたデザインの七階建てのビルに建て替えられ、きれいになった。
踏切を渡って少し行くと、警察署が見えてきた。長い棒を持った若い男が立っている。
時刻はまだ八時前である。立ち止りそうになった花山は、私服の警官と眼があった瞬間に
気が変わって通り過ぎた。ビールを随分飲んだので、花山は紅い顔をしていた。飲んでいなければ、中に入ったかも知れないと思った。
帰宅して照明をつけ、パソコンの電源を入れた。冷蔵庫からウーロン茶を出して飲んだ。
パソコンの前の椅子に座ってから、プログラムが立ち上がるとインターネットで検索した。
千九百九十六年のヒット曲の中に、あの歌手が歌った曲が入っていた。