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扉を開けたメール

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 花山は興奮しながら携帯電話の電源を入れた。
「あの歌手の下の名前は『ともみ』ですね。ネットで検索してわかりました」
 少し経ってから返信がきた。
「そうでした。間違いありません。ともちゃんって、呼ばれていたような気がします」
 だからどうなのか。そう思うと花山は、急に白けた気持ちになった。
「ところで、よく考えてみてください。ともみさんは学校へ行った記憶はありますか?」
「まるでないのです。こうしてメールできるのは、テレビと本を見てことばを憶えたからです。テレビと本のおかげです。テレビの講座で英語も勉強しようとしましたが、そこまでは無理でした。あなたの、ほんとうのお名前を、教えて頂けませんか?」
「警察署の前を通りましたが、ビールを飲んでいたこともあって、通り過ぎてしまいました。私は花山です」
「花山さんですね。笑われるかも知れないけれど、あなたはわたしにとって、唯一のお友だちのような気がしています。明日は土曜日ですね。今夜はたくさん、お話をさせてください。お願いします」
 無料出会い系サイト。花山はそう思った。相手は若い娘だ。面白い。

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