扉を開けたメール
翌朝のまだ暗い四時に起きると、雨はやんでいた。花山は家と庭、工房の掃除を丹念にした。
そのあと華奈と一緒に、彼は穂高の家の周囲の道でジョギングをした。
すっかり明るくなった七時半に四人で朝食を済ませたとき、花山の携帯電話が着信した。
「おーい間島だけど、花山君。サイトの創作のページを見てくれ。新入会員の『トモミ』という人の作品が、『その他創作』のノンフィクション部門で一位になってるぞ!」
「あれ?間島さんは、そういうのを読まない主義じゃなかった?」
「マイページの横にランキングが出てたから、思わず読んでしまったよ。タイトルが『閉じ込めた愛』っていうんだ」
「敬子さんかな?『トモミ』というハンドルネームだったら、その可能性はあるな」
「可能性なんてものじゃない。もろ、敬子さんだよ。読めば判るよ」
「そうか。じゃあ、急いで読んでみるよ」
「敬子さんがどうしたって?」
穂高は驚いた顔で聞いた。
「インターネットのサイトに小説か手記を載せているみたいです」
華奈と正子はつい先程から、そこにはいなかった。ふたりは庭の花を見たいと云っていた。
「ジャンルは『その他創作』のノンフィクションだそうです」
「どういうつもりでそんなことをしたのかな。まさか『遺言』じゃないだろうな」
「こちらで華奈さんを無事に引き取ったから、肩の荷が下りたという気持ちかも知れませんね」
「サイトについてはどこで知ったのか、不思議な気もする……」
「穂高さんのことを話したとき、かなり丁寧にサイトの説明をしたんです」
「そうだったのか。ともかく、急いで内容を確認してみよう」