扉を開けたメール
「云っちゃ悪いけど、可愛い子なんて幾らでもいるんだ。それが全部さらわれたら世の中どうなる?」
「穂高さん。お気持ちはわかりました。明日、ぼくが行って話を聞いてきますよ。華奈さん。それでどうだろうか?」
「まだ、八時よ。電話でどういうことか、聞いてみなさいよ」
正子が最も賢明だった。
「そうか。文明の利器をこういうときに活用するべきだな。お前を見なおしたよ」
穂高は感心している。
「そうですね。冷静になりましょう。じゃあ、電話してみます」
「さすが!花山さん!」
そう云ったのは華奈だった。
花山は携帯電話に登録済みの敬子の番号を選択した。
「おかけになった電話は、お客さまの都合により……」
「店が営業中だから出ませんよ」
「そうか。じゃあ、花山君。明日つかまえて説教をしてきてくれ」
「わかりました。そうですね。華奈ちゃんは生まれた家に戻れたんだし……」
「わっ!凄い雨!」
華奈が叫んだ。
大きな窓の外の庭園灯の光の輪の中に、大粒の雨が降っているのが見えた。庭の樹木が霞んで見えるほどの大雨だった。
「雨潸々と この身に落ちて……。そんな歌があったな。誰の涙雨かな」
穂高はしみじみとした口調で云った。
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