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扉を開けたメール

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「明日から完全に華奈ちゃんになり切るんだよ」
 花山も笑顔で云った。
「ええ、わかってる」
「寒くない?風邪ひかれたら困るな」
「大丈夫。慶喜さんこそ風邪ひかないでね」
「馬鹿は風邪をひかないって云うけど、ぼくは一度も風邪をひいたことがないんだ」
「わたしも、風邪を体験したことがないの」
コンサート会場から出て暗い道を十分以上歩いた。
「ほら、冬の星座の代表、オリオン座だよ」
 花山がそう云ったとき、星が流れた。ふたりは繋いでいる手に力を込めた。
「見た?!」
「ええ、見たわ!一箇月振りよ」
「あれからもう一箇月!早いものだね」
駅が近くなってきた。ふたりで同時にくしゃみをした。駅前のラーメン屋に入ることにした。

         *

 ふたりでコンサートへ行ってから、二週間が過ぎた。花山はアパートの前で間島に別れを告げた。
「立派な陶芸家になって、国宝級のぐい飲みを頼むぜ」
「そのときは一緒に飲もう」
 
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