扉を開けたメール
「ともみさんが好きなんでしょ。だめよ。ふたまたは」
友里は笑いながら厨房へ戻って行った。
花山が自分の席に戻ると、たくちゃんが注ぎにきた。
「デコちゃんのファンです。私も未来の個タクさんと同じくタクシーに乗ってます」
「たくちゃんですね。どんどんいい絵を描いてください」
たくちゃんは高齢者に近いのだが、若々しいものを感じさせた。
「私の娘のミーちゃんにはかなわないんですよ。プロの画家ですからね。花山さんは陶芸を習うそうですね。頑張ってください」
「はい。ありがとうございます」
ともみがビールを注ぎにきた。
「花山さん。わたしは花山さんにSOSのメールを送ってよかったなぁと、毎日思ってるのよ。
今日からは華奈として生きて行きます。よろしくね」
「名前が変わっても人柄は変えないでほしいな。華奈ちゃんか。一緒に陶芸を勉強して行こうね」
「ええ。頑張るわよ。花山さんも頑張ってね」
笑顔のミーちゃんができたお好み焼きを持ってきてくれた。印象は友里と少し似ている気がした。
「花山さん。陶芸家を目指すんですってね。こう見えてもわたし、画廊の経営をしてます。個展のときはよろしくお願いしますね」
「個展ですかぁ。何年先のことか判りませんが、新しい夢ができました。頑張りますよ」