扉を開けたメール
「無理はしないでください。但し窯に火を入れたらこき使いますからね。覚悟しておいてください」
「わかりました。頑張ります。どうぞ、飲んでください」
老人はグラスのビールを美味そうに半分まで飲んだ。眼を輝かせ、瓶を持って待っていた花山は、そのグラスを満たした。花山は立って穂高の妻の席の後ろへ行った。
「花山です。近いうちにお宅様へ引っ越させて頂きます。よろしくお願い致します」
「はい、はい。あら、いい男じゃないの。腕によりをかけてお食事を作りますからね。残さず食べてください」
花山は正子にも握手を求めた。
「ありがとうございます。一粒の米も残さず、頂きます」
花山は感動していた。穂高の妻の正子も、気性の穏やかな、温厚な老婦人だと、花山は確信した。花山はビールを注ぎながら幸福感を味わっていた。
「花山さん!会社をやめてもここに来れば会えるからね。土曜日と日曜日だけのアルバイトよ。よろしくね」
花山は驚いてことばが出なかった。焼く前のお好み焼きの材料の器を運んでいたのは、勤め先の女子事務員の竹沢友里だった。
「何よ。わたしって、そんなに美人?」
「……そうだねぇ。和服を着ると一段ときれいだ」