扉を開けたメール
正午に敬子以外が着席し、グラスにビールが注がれた。ともみのグラスだけはオレンジジュースである。
間島が挨拶した。
「朝稽古が無事におわったので駆けつけました。忘年お好み焼きオフ会幹事、未来の個タクです。本日はお忙しい中、遥々と近くからのご参加、まことにありがとうございます。早速ですが、乾杯の音頭を取らさせて頂きます」
三人だけ間島のギャグに反応して笑った。間島の「乾杯」という声に全員が声を合わせた。
「例の件はオーケーですよ。寝泊まりできる部屋を用意しましたから、いつでも引っ越してきてください」
花山の隣の席でそう云った穂高は、髪型が侍のようなちょんまげスタイルなので目立つ存在だが、気性は穏やかで、温厚な老人らしい。花山はこの終始笑顔の老人をすぐに気に入ってしまった。
「そうですか。ありがとうございます」
花山は老人に握手を求め、陶芸家はそれに応じた。そして、笑みをたたえたまま、花山を凝視めながら云う。
「給料は要らないというので支給しませんが、プロバイダ契約済みのパソコンを一台、花山さんの部屋に設置することにしてあります。明後日からですが、自由に思う存分使ってください」
「それだけが気になってました。使用料は支払わなくていいんですか?」
「払えるなら払ってください。ほかにアルバイトでもしますか?」
「自由時間があればそうします」