扉を開けたメール
「息子の罪を償う意味でも、ともみさんを幸せにしてあげたいのです。勿論、あくまでも戻ってきた華奈として、家族の一員に迎えたいと思っています。花山さんは心の優しい方だと確信しています。思いやりに満ちた心の持ち主だと信じています。だから、思い切って全てを打ち明けました。どうか口外なさらずに、以上のことは、花山さんの心の片隅にしまっておいてください。身勝手なことを申し上げ、心苦しく思っています。
以上のミニメールは、まことに恐縮ですが間もなく削除させて頂きます」
<.章=オフ会>
花山はオフ会前日の今日、購買部から製造部の巻き線係りに配置転換するという通達を、人事部から受け取った。入院していた受け入れ係の社員が、意外に早く退院し、週明けから出社できることになったのである。
花山は穂高に信頼されていることを実感していた。また、ともみと何度かデートをする中で、彼女を急速に愛しく思い始めていた。穂高の足元を見るような後ろめたさを覚えながら、花山は陶芸家に心の内をメールで語った。
「私は現在の勤め先で、今流行りの虐めに遭っています。できれば何か新しく手に職をつけて、再出発をしたいという気持ちです。そんな折り、穂高先生の焼き物のお写真をインターネットで拝見しました。心から感動しました。その作品の素晴らしさに、陶酔しました。是非、先生のお作を直に拝見したいものだと痛切に想っています。お嗤いになられるかも知れませんが、
できれば弟子入りさせて頂き、修業をさせて頂きたいと、痛切に願っています。どんな下働きでもさせて頂きます。勿論、給料などは望みません。但し、修業をさせて頂きながら、恐縮ですが一汁一菜のご提供だけ、お願い申し上げます。即答はご無理かと存じます。明日の顔合わせの後にでも、充分にご検討の上、ご考慮願えれば幸いです
花山慶喜」
オフ会の参加者は、全部で七名が確定していた。ハンドル名を羅列すると、デコちゃん、未来の個タク、かなのじいじ、かなのばあば、あやさん、たくちゃん、ミーちゃん。そのほかに、ともみがゲストとして参加し、敬子も手があき次第、席に着くことにしていた。