扉を開けたメール
「カフェ・ソレイユ」を随分探しまわった。
友里と花山とでは、それぞれ思い込んでいる概念が、大幅にずれているようだった。方角の把握に違いがあるのだろう。かなり遠回りをさせられて駅の反対側へ行くと、その洒落た店はあっさりと出現した。あとは自転車をどこに置くか、という問題を解決しなければならなかった。 通勤手段をバスから安易に自転車に変更したツケがここで襲ってきた。駐輪場に空きスペースがなく、また駅の反対側に戻ることにした。その途中、かなりゆっくりと踏切を通過する電車を眺めた。
「あっ!蒼井優!」
「違うよ。でも、結構似てたか」
傍にいた女子高生たちが騒いだ。電車のドアの窓から外を眺めている娘。それはともみだった。彼女の白い衣服は、この前会ったときのものかも知れないと思った。これから駅へ行って花山がその電車に乗ることは、不可能だろう。自転車を走らせながら、敬子に電話した。
「ただいま電話にでることができません……」
間島も同じだった。
「花山さん!道に迷ったんですか?」
思いがけないところで友里に遭遇した。突如幽霊に遭遇したような恐怖。