扉を開けたメール
大型トラックが往き交う大通りに入った。
「わたしはそれ以外ですよ」
「家が近ければお誘いしたいところです。ぼくもそれ以外ですけど……」
ともみを思い出しながら云った。
「ちょっと寄り道くらいなら……」
工場の周辺には通称「焼き肉ストリート」があった。二十軒近い店が道の両側に軒を並べていた。ゲートに中国人の子供が踊っているような像が飾られていた。
「焼き肉は好きですか?」
「三十分くらいしかお付き合いできませんから……」
「じゃあ、駅のほうのカフェで待ち合わせ」
「そうですね。嬉しい」
店は友里が指定した。地元なのに花山は場所を尋いた。一旦バス停で別れ、花山は自転車を取りに戻った。
自転車で走りながら物思いにふけるのは嫌いではない。急に冷え込んできたのでバッグから手袋を出した。四日間、間島からも、敬子からも連絡がない。花山からその後のことを問い合わせる気にならなかった。全てが発覚して敬子が警察に逮捕されるという、最悪の事態が判明しそうで怖い。テレビは見ていない。ラジオも聞かない。
新聞も読んでいない。政治動向を知りたくないのだった。私腹を肥やすことしか考えていない政治家たちが、上げ足取り合戦に躍起になっている。その醜さを正視できない。虐めや自殺、殺人の報道にも触れたくない。