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扉を開けたメール

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 余りにも哀しい話だった。敬子も、ともみも、花山も、間島も泣いた。酒酔い運転をする人間が憎い。四人は同じ気持ちだった。
「コーヒーが冷めちゃったわね。淹れ直してくるわ」
敬子は泣きながらそう云い、コーヒーカップなどをのせた盆を持って部屋から出て行った。そこに残った三人は、哀しくて何も云う気になれなかった。
 それから十五分後に、敬子はまたコーヒーを運んできた。
「コーヒー、飲んでください」
 勝手がわからないともみのカップに、花山は砂糖とミルクを入れてあげた。
 間島はブラックで、ほかの三人は、砂糖とミルクを入れて飲んだ。
「おいしいのね、コーヒー。想った通りの飲み物です」
 ともみは嬉しそうだった。
「ともみさんが一番飲みたかったもの?」
 花山がそう尋ねると痩せた少女は微笑んで頷いた。
 敬子はまだ自分の中にいた。
「……夫の公康と長男の孝太が同時に轢き逃げされるなんて……。夫はまだ若かったし、孝太は四歳の可愛い盛りだった。だから、事故のあとで生まれた二番目のともみは、絶対に、誰にも取られたくなかった……」
 敬子のまぶたから大量の涙が、また溢れた。娘もまた泣いた。
 
作品名:扉を開けたメール 作家名:マナーモード