扉を開けたメール
「はい。サスペンスドラマで知りました。事故にあったひとが何も憶えてないこと」
「これから知らない人に何か聞かれたら、とにかく憶えてないと云ってください」
「なぜですか?」
「ともみさんが敬子さんの子供だと判ってしまうと、敬子さんは警察につかまってしまうかも知れません。だから何も記憶がないと、云い切ってください」
敬子が四人分のコーヒーを持って来た。
花山が補足する。
「監禁罪は重い犯罪なんです。敬子さんはともみさんを守るために閉じ込めていた筈だけれど、監禁という事実が警察などに判ってしまうと敬子さんは刑務所に閉じ込められてしまいます」
間島が引き継いだ。
「そうなったらともみさんは生活できなくなります。だからともみさんは敬子さんを守るために
記憶喪失になることが必要です」
敬子は盆のままテーブルにコーヒーカップなどを置いた。
「記憶喪失の演技……信じてもらえますか?」
「頑張ってください。ともみさんは記憶喪失の家出少女だと、敬子さんも云い張ってください。店の前で倒れていたので、だからともみさんを保護したと、警察に云ってください」
間島は話す相手を変えて云った。