扉を開けたメール
花山はこの前から読んでいる小説を読もうとしたが、読書に身が入らない。本当に監禁されているのであれば、携帯電話など持っている筈がない。そうも思った。
またメールがきた。
「この部屋には色々なものがあります。バス・トイレつきです。テレビもあります。百科事典や小説の本、学習参考書もあります。食事も一日三回、供給されています。南向きなので窓からは陽射しも入ってきます」
それを読んだ花山は笑ってしまった。ふざけている。何を考えているのだろうか。
「いい生活ですね。私の安アパートの部屋にはお風呂もなく、太陽の光も入ってきません」
返信がきた。
「だけど、自由がありません。だれがどんな目的でわたしを監禁しているのでしょう。それを知りたいのですが、手掛かりがありません」
「何年前からのことですか?」
「今年が二千十年ですね。黒いブラウン管式テレビのシールを見ると、千九百九十三年と、印刷されています。だから少なくとも十七年前か、十八年前からではないか、とも思われます」
「携帯電話を持っているのはいつから?」
「昨日手に入れました。床の高さにお弁当が入ってくる孔があって、苦労してそこから腕をのばしたら取ることができました。コンセントからプラグを抜いて、充電器と一緒にこちら側に持ってきました」
「電話帳の画面を出せますか?」
「はい。電話番号が二十二件、そのうちメールアドレスつきのが五件ありました」
「私のもその中にあったわけですね。何という名前になっていたのですか?」