扉を開けたメール
「そうですか。すみませんね」
「ありがとうございます」
着物姿の女性はふたりの前を通って奥へ消え、微かに階段を上る音が動いて行った。
ふたりはまた腰を下ろした。改めて店の中を見渡すと、フローリングの座敷に調理用の
鉄板つきテーブルが四卓あり、椅子席のテーブルも同数だった。全部で三十人以上の客を迎えられるだろう。女性の店主だけではかなり忙しいに違いない。
「ともみさんは二階だったのか。携帯電話は彼女が持っているんだ」
花山が小声で云った。
「だったら、無駄足か?そういうことは、もっと早くいわなくちゃ……手ぶらで戻ってきたら、何て云い訳するかな?」
花山は肝心なことを云い忘れることが多かった。
「……そうだね。申し訳ない」
程なく階段を下りてくる音と気配に次いで、ピンク色の携帯電話を手にした店主が戻った。優しい笑顔が印象的である。
待っていたふたりはひどく驚き、慌てていた。
「はい。お待たせしました」
電話機が差しだされた。ふたりの男は慌てて立ち上がった。
「ありがとうございます。持ち主は喜ぶでしょう」