扉を開けたメール
少し待ってから間島と花山が店内に入ろうとすると、
「もうすぐ店じまいですよ。日曜日は早く閉まるんです」
と、常に陽気なひとなのではないかと想像させる中年女性が、笑顔で教えてくれた。ほかに若い男女も何組かいる。どうやら複数のグループが同時にでてきたらしい。
「こんばんは。いきなりで恐縮です。山村美香の代理の者ですが」
間島が見送りにでてきた着物姿の女性に云った。
「ああ、携帯電話の件ですね。お入りになって、どこでも結構ですので、お掛けになってお待ちください」
間島と花山は無人だが、騒々しい店の中に入った。大型テレビに映しだされた大勢の少女たちのグループが、アップテンポの曲を踊りながら歌っているからだった。
間島と花山は座敷の上がり口に腰掛けて座った。外では店主の女性と客たちが笑い声を交えて話していた。
間もなく店の外が静かになった。待っていたふたりは立ち上がった。入ってきた中年の美人店主はにこやかに云った。
「お待たせしました。携帯電話、すぐに使えるように充電しておきましたよ。お掛けになってお待ちください」