扉を開けたメール
間島は酒の封を切ってふたつのグラスに注いだ。ふたりは笑顔で乾杯した。
「おめでとうございます。……おお、この酒は日本酒の嫌味が全くないね。凄く飲みやすいよ」
「そうだろう。秘蔵の酒だよ。この日のために用意していた超高級酒だ」
「ところで、美香ちゃんはどこに携帯電話を置き忘れたんだろう」
それに対して間島は或る駅名を云い、その駅の近くのお好み焼き屋へ行って、確認してあげると約束したようだった。
そこは花山たちの住まいの最寄り駅から、ふたつめの駅だった。
「あの子は記憶力抜群なのに、ぼおっとしたところがあるんだ。それに、かなり遠慮深いというか、凄く小心なところがあるね」
「そういうひとに限って、本当は芯が強いのかも」
花山は確信もなくそう云った。
「そういう感じはあるな」
「近いうちに一緒にそこへ行きたいね」
「おや、君も遠慮深いね。善は急げだ。今から行こう」
時刻はまだ午後七時になったばかりだった。
「悪いね。疲れているのに」