扉を開けたメール
続く日曜日も、好天の朝を迎えた。花山の朝食はいつもコーヒーとトーストである。冷蔵庫にあれば、卵、ソーセージ、ベーコンなどを焼くこともある。
コーヒーを飲みながら、彼は考えていた。間島も「あやさん」の携帯電話から着信していることを思い出した。間島に一緒に考えてもらおうと花山は思ったが、彼はデートだと云っていたことを思い出した。
花山はじっとしていられずに自転車に乗って出かけた。よく見ると街の中には「カラオケ」という看板が至るところにあった。紅い幟も呆れるほど立ち並んで風にはためいている。
線路と並行する道に居酒屋と消防署がある、といった風景もあったが、「あやさん」との関連は感じられない。
あやさんの携帯電話に「デコちゃん」の携帯メールアドレスが登録されていた。つまり花山は、間島と共に恐らく一年か二年前、あやさんのいる店へ飲みに行ったに違いない。
そこであやさんと意気投合した花山と間島は、メールアドレスと電話番号を教えたのだろう。
だが、そのとき花山たちは、飲み過ぎて記憶を失ったのではないか。
晴天の日曜日の街には多くの人の姿があり、どこが不景気なのかと思う。花山はゆっくりと自転車を走らせながら、半ば根拠のない推理を始めた。