扉を開けたメール
「カラオケスナック以外で、カラオケで歌うとしたら?」
「……バー、クラブ、喫茶、ボックス、小料理屋、……お好み焼き屋、中華屋、旅館、ホテル。いろいろ取り揃えてまっせ」
「そうか。随分あるなぁ」
「おっと!お金持ち風のお客様だ。じゃあねぇ」
花山は落胆した。藁をも掴む想いで、ともみにメールを送ることにした。
「花山です。ともみさんのところに聞こえてくる音は、電車の音と、サイレンとカラオケでしたね。それだけでしょうか。よく考えてみてください」
間もなく、送信に失敗した、というメッセージが、画面に現れた!利用停止にされたことは間違いない。それを実感した花山は、生まれて初めて本格的に絶望的な気持ちになった。その一瞬、本当に目の前が真っ暗になった。それから暫くの間、花山は泣き続けた。
泣きやんだ彼は警察署へ行くべきだとも思ったが、ともみが生命の危機に直面しているわけではないことに、漸く気付いた。
それはまだ早い。
「あやさん」とはどこの誰か。それをもう一度、考えてみようと思った。
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