一期一会
「ごめんね。もう、気にしないで。飲みましょう」
しのぶはコンビニで買ってきたつまみがあったのを思いだしたと云い、厨房から取って戻った。テーブルに出されたのはポテトチップスを始めとする見慣れたつまみ類ばかりである。
「学さんの趣味って何?」
しのぶは微笑んでいる。早川は胸を撫でおろしていた。
「そうですね……趣味はカラオケ、写真、音楽鑑賞、読書ですか。あと、パソコンサイトで日記を書いたりコメントしたりしてます」
「出会い系?」
「中高年のための情報交換サイトです。グループ交際サイト、という面もあります。オフ会というのがあって、飲んで歌って踊って……」
「中高年のための不純異性交遊サイトじゃないのね」
「みなさん真面目ですよ。健全です」
「愉しい?」
「それはもう、愉しいですよ。絶対に出会わない筈の人たちが、バーチャルの世界から実在する人物として眼の前に現れるんですからね。但し日記などで想像していた人物像とは随分違います。みなさん、幅も奥行きもありますからね」