一期一会
「ごめんなさい。悪気はなかったんです」
しのぶの嗚咽が、早川をうろたえさせた。
「すみません。申し訳ない」
早川は土下座して謝り続けた。
「殴ってください。蹴ってください」
しのぶの嗚咽は止まりそうにない。
早川は絶望的な気持ちになった。恥ずかしくもあった。
「失言の常習犯なんです。軽率な奴です。どうしようもない馬鹿なんです。許してほしいと云ったって、駄目ですよね」
暫くして嗚咽は止まったようだった。静寂の中で、早川は土下座したままである。
気づまりだった。
「二週間……救急車で運ばれてから……たった二週間で……」
「……」
「土下座なんてやめて」
「……」
「これで最後。もう、泣かないわ。ソファーに座って」
早川はソファーに戻った。彼も顔色が良くない。