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一期一会

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「稼げる仕事みたいですね」
「生きて行ければね、何でもいいのよ」
「それは同感ですね。収入が多い人を羨む気持ちはありません」
「そうなの?」
しのぶは改めて早川に注目している気配だ。
「毎日御馳走三昧より、たまたま入った場末のラーメン屋で感動したり、というのが好きですね。重苦しい曇り空から思いがけなく陽が射すと、凄く嬉しい気持ちになったりする」
「そういうことね」
「宝くじが当たった人が、近所の人に猟銃で撃たれて死んだ。という話を聞いたことがあります。つくり話かも知れませんけど」
「財産がある人は守るために汲々としていたり」
「喪うものがない状態は、とにかく気楽です。餓死しないで寝るところがあれば、それで充分です。今はとりあえず日本は戦争と無縁ですね。でも、治らない病気で死んだ人たちは少なくない。これから先のことは判りませんけどね」
早川はその刹那、失言に気付いた。
さっとしのぶが蒼ざめたような気がした。彼女のまぶたから大粒の涙が落ちた。
作品名:一期一会 作家名:マナーモード