一期一会
「競馬のほうはどうですか?」と、澤田。
「競馬ですか?あれも持続してやってないとだめですね。三連単当たりました?」
「たまには当たりますけど、難しいですね」
「あれは宝くじみたいなものですよ。乗務員仲間に七頭ボックスで時々買ってるのが
いるんです。ひとレース二万一千円買って三年間ずっと不的中だと云ってました」
「真央ちゃんにすももをあげていいですか?」
と、しのぶが母親に聞いた。
「はい。ありがとうございます」
家族三人が笑顔になった。しのぶは三個出してテーブルに置き、
「三人分です……さえらいいよね」
さえらは首を縦に振った。真央と澤田は、笑顔で礼を云った。
しのぶは早川に、そろそろ泊まるところへ行きたいと云った。早川は驚きを秘して賛成した。さえらは少し不安気な面持ちだ。澤田たちの家族も親戚の家に泊まるのだと云いながら一斉に立ちあがった。
フロントを通過するとき、あの娘が居ないので早川は落胆した。別れのことばを考えながら歩いてきたのだった。玄関でそれぞれ靴を履いて暗い屋外へ出た。車の場所が離れているので、玄関前で別れることになった。