一期一会
「早川さんのタクシーが来てくれることになったから、もう大丈夫だよ」
真央は早川にありがとうと云った。しのぶも澤田にお礼のことばを述べた。
「はい。何かのみものでも」
しのぶは千円紙幣を一枚、早川に渡した。早川はすぐに立ち上がった。
「ちょっと行ってきます」
フロントに向かって急ぎ足で歩きながら、彼は今夜も車中泊になりそうだと思った。
「すみません。アイスコーヒーをひとつお願いします」
「ありがとうございます。お風呂は如何でしたか?」
爽やかな娘の笑顔が早川の心を慰めた。
「最高の贅沢でした。素晴らしい庭園露天風呂でした。夜景がきれいで感動しましたよ」
「ありがとうございます」
娘は相変わらず笑顔のままだった。
「明日もここに来たくなりましたよ」
「残念ですね。明日はわたし、お休みなんです」
娘は早川にグラスを渡した。
「そうですか。しっかり休養してください……ここには車で通っているんですか?」