一期一会
「東京にも玉川という地名がありますよ。字は違うけど、多摩川の近くです」
「あっ、それ天つゆです。御蕎麦は左の……」
「ああ、そうだ。左が蕎麦つゆか」
早川は逆にしていた。
「免停中なんです。それで、お願いしたいの」
「あなたが?何をやったんですか?」
「スピードです。五十キロオーバー」
「派手にやりましたね」
まぐろの刺身を口に入れた早川が、少し笑いながら云った。
「友達が危篤状態だったんです。そのとき……」
哀しそうだった。
「ごめんなさい。そこまで気がまわらなくて。……わかりました。引き受けましょう」
「本当?最初に頼んだ友人に急な仕事が入ってしまって、途方に暮れていたんです」
早川は頼まれると断れないことが多かった。それを云おうとしてやめた。