一期一会
「それは無理ですよ。そんな道路はありません」
「早川さんですか?風邪をひきますよ」
突然しのぶが見知らぬ男に変身して云った。
夢から覚めた早川は、傍に裸の男が立っているのを見て驚いた。早川と同年輩らしい、体格の良い男だ。
「早川さんですよね。奥さんに頼まれて呼びに来ました」
「はい。わかりました。ありがとうございます。すぐに行くと伝えてください」
男は木立の間に消えた。早川は数分間湯に入り直した。バミューダとTシャツという姿で彼は大広間に入って行った。しのぶとさえらの席に、家族連れらしい三人が同席していた。しのぶは早川を見ると表情を輝かせた。さえらは一旦驚いたような顔をしてから笑顔になった。