一期一会
「入口の子、可愛いわね」
「素直そうな性格を感じましたね」
「いいひと」と、さえら。
「さえらも気に入ったんだね」
「うん」
*
食事が済むとすぐにしのぶはまた、ロッカーで必要だからと云い、早川に百円硬貨を手渡した。しのぶたちと別れた彼も風呂場へ向かった。
ロッカールームも広々としている。早川は急いで衣服を四角い空間にほおり込み、何もかも真新しい感じの風呂場へ行って快適に身体を洗った。数人だけ、内湯でくつろいでいた。早川は、内湯には入らずに、想像を絶する広さの露天風呂へ行った。
そこは大庭園だった。様々な色の大きな岩が如何にも自然の風景を切り取ってきたように、全体に配置されている。そして大小の多数の樹木が、これもまた自然の趣を生み出していた。
その中の池のような湯船に浸かってみると、程良い湯加減である。風に吹かれながら星空を眺めていると、昨夜予感していた幸福がここにあったのだと、そう思わずにはいられなかった。