一期一会
「学さんはアイス・コーヒー?」
「すみません。アイス・コーヒーをお願いします」
少し待って二つのグラスを早川が受け取った。笑顔の娘と凝視め合った。指も触れ合った。早川は初恋の頃を思い出しそうだった。
しのぶが代金を支払っている間に、早川とさえらは夥しい土産物が並ぶコーナーの、その奥の大広間へ向かった。
明るくて清潔感溢れるそこには、何十もの座卓が並んでいた。新しい畳のにおいが気持ちいい。しのぶが二人を追い越して奥のほうへ行ったので、
早川たちは彼女のあとに従った。
食事中の人や、座布団を並べて横になっている地元の人と思われる家族連れが来ている。広いスペースの七割以上が空席になっている。テレビがないので静かだった。
カラー写真付きのメニューを見ながら注文するものを決めた。三人とも麺類を注文することにした。それが決まると早川がしのぶから五千円札を受け取り、調理場前のカウンター横にある券売機の前へ行った。
機械から出た食券をカウンターの上に置くと、すぐにポケベルのようなものと、
しのぶのレモンチューハイを受け取って早川は席に戻った。