一期一会
庭園大露天風呂
電柱に「見晴らし庭園大露天風呂」という広告を発見したのは早川だった。
「新しくできたのかも。行ってみたいわね」
電柱を見ながら行くと、光に集まる虫のように入浴客が集まるわけである。
「虫歌の湯」と、奇妙な名称の日帰り温泉施設だ。
「露天風呂はいいよね」
入り口に幟がたくさんはためいていた。道路から入ると、その先は常識を超える広さの駐車場だった。但し、工場か何かの跡地らしく、コンクリートの地面には避ける必要のある凹凸があった。その更に奥が本当の駐車場で、五十台以上の乗用車が入っている。
その中に車を止めると、三人は元気良く歩いて行った。見たところ新しくてきれいな建物は、屋根が高いけれども平屋らしい。既に日は暮れて、空には星が見え始めていた。玄関の明かりが、三人を温かい気持ちにさせてくれる。
「今日は特別割引の日だって」と、しのぶ。
受付のほっそりとした若い娘の笑顔が素晴らしい、と早川は思った。
「いらっしゃいませ。こんばんは」
絶対に優しい性格であることを、その表情は語っていた。
しのぶはさえらの療育手帳を見せた。