一期一会
「凄く親切なおばさんがいて、充電器を選んでくれたよ」
「都会のコンビニではあり得ないよね、そういうの」
しのぶは感心するほど明るい笑顔を見せていた。さえらも笑顔だった。
道が広くなり、とうとう長野自動車道、松本インターの近くまできてしまった。
スロットルを踏み込んで本線に合流したとき、気が付くと車の速度は時速百三十キロに達していた。交通量は想像以上に少ない。殊に大型のトラックが少ないので走り易い。蒼い空に白い積乱雲が眩しい。間もなく、梓川サービスエリアに入った。
大型の扇風機のようなものが設置されている。ミストシャワーと云うらしい。冷たい霧が風と共に噴出している。中学生たちがそれを浴びて笑っていた。猛暑は全国的に居座っている。まだまだこれからも暑い夏が、熱中症による犠牲者を増やし続けるのだろう。
トイレから車に戻って燃料計を見ると、半分以下に減っているのに気付いた。本線車道へ入る前に給油をすることにした。ハイオクの単価は百四十九円と、最も安い価格よりリッターあたり二十円近くも高い。しのぶにそれを云ったが、彼女は少しも動じなかった。
クレジットカードでの支払いだからかも知れないが、早川はその反応に唖然とした。
豊科インターを過ぎ、筑北パーキングエリアを通過した。早川は高速道路だと周囲の風景が余り見えないことに不満を感じ始めていた。せっかく長野まで来たのに、という気持ちになっていた。